はじめまして。僕です。
好きな映画は安達祐実さんの『REX 恐竜物語』です。よろしくお願いします。
前回はEstrangedについての妄言で終わってしまいましたが、今回はそれよりも興味深い話題を提供したいと思います。
みなさんのお力で僕を人気ブロガーの地位に押し上げ、あの憧れのブログ甲子園へ連れて行ってください。
何から書いていこうかナーと考えてみた時、真っ先に思い浮かぶのは奇跡のようなひとつのエピソードです。
Twitter上でも話題となっていたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
仮に『Japangleインシデント』とでも呼ぶ事にしましょうか。
今思い返してみても、あれは本当に奇跡のような出来事でした。
ガンズの来日が発表され、我々日本人ガナーが興奮と感動でキチガイのようになっていたある日の事。
Twitterのフォロワーさんのひとり(名前を仮に“すし太郎”とします)が、タイムライン上でこんな呼びかけをしました。
ガンズのライヴのためにみんなで横断幕を作りませんか?
みなさまも画像などでご覧になった事があるのではないでしょうか。
最前列の熱心なファンが柵に垂らして、バンドへの熱いメッセージを伝えるアレです。
ガンズの公式サイトにおいても、海外の熱狂的な肉食系ファンが自作の横断幕と共に野獣のような雄叫びを上げている写真がアップされており、日本人ガナーの気合いを世界に知らしめる一世一代のチャンスでもあります。
すし太郎の呼び掛けに賛同した日本人ガナーのみなさんが夜な夜な激論を交わした結果、このようなクオリティが高すぎる横断幕が完成。
アジア人の顔なぞ見分けがつかんわい!という欧米人が見たとしても、「あ。これは日本のだね」と一発でわかるであろう秀逸なデザインとなっております。
ちょうかっこいい。
(写真:かっこよすぎるJapangle横断幕)
ちなみに「Welcome Back To The Japangle」というこれまた秀逸なフレーズは、我が国におけるガンズの第一人者である音楽ライターの増田勇一氏がMusic Life誌の編集長を務めていた時、同誌編集長として最後の号となった1998年4月号のガンズ特集記事の中で使用された「Welcome Back To The Jungle」という名見出しが元ネタです。
そして、ここに大阪のガナー ロッピンさん(口癖は「ボウリング、何ピン倒してもロッピンです。よろしくゥ!」)が考案したJapangleという造語を付け加える事により、「Welcome Back To The Japangle」という天才的なキラーフレーズが誕生しました。
これはもうガンズの面々もイチコロでしょう。
横断幕を手に意気揚々と大阪入りしたすし太郎。
筒に入れた状態で1メートルくらいの長さでしょうか。
わりと大きめの荷物なので、もしかしたら入り口で持ち込み禁止だと言われるかナー、などと心配しておりましたが、横断幕と共に無事に入場して来たすし太郎の姿に一安心。
さあ、あとは最前列の柵に設置し、我々の歓迎の意を余すところなくバンドに伝えるだけです。
広げると横3メートルという大きさになる横断幕、面識の無い方々の協力も頂戴し、無事に設置完了。
我々とステージの間に仁王立ちするセキュリティスタッフの方もテープ留めなどを手伝ってくださり、その親切な対応に感激いたしましたよ。
威風堂々と設置された横断幕のあまりのかっこよさに柵から身を乗り出して無理な体勢で写真を撮っていたら脇腹を痛めました。
くりこさんに話したりしようものなら猛烈に馬鹿にされそうだったので、この話はここが初披露となります。
みなさんも柵から身を乗り出して横断幕の写真を撮る際にはお気を付けくださいね。
無事に設置も終わり、BABYMETALまで約2時間の待ち時間を雑談しながら潰していると、会場内を散策していたガンズ側スタッフが横断幕の前で足を止めました。
なんとオフィシャルフォトグラファーのKatarina Benzova(金髪の超美女)が写真を撮ってくれるというサプライズ。
しかも、その写真をガンズ公式アカウントから世界に発信してくれるというファンにとっては身に余る光栄に預かる事が出来ました。
ガンズ公式がSNSで発信してくれたという事は、もうこれはバンドからのお墨付きを頂戴したようなもの。
あとはバンドメンバーが喜んでくれれば言うことなしです。
しかし、ここで思いもよらぬトラブルが発生。
すし太郎の頭上に暗雲が垂れ込める事態に。
先程まで設置に協力的だったセキュリティスタッフですが、その中のチーフ的なポジションの方が横断幕の前までやって来て、「このような物の設置は認められない。これはバンド側の要望なので、すぐに撤去するように」と言い出しました。
予想だにしなかった展開に唖然とする我々。
いやいやいや。バンドのオフィシャルカメラマンも撮影してたし、ちょっと主催者側に訊いてみてくださいよっ!
すし太郎が食い下がりますが、これは主催者側云々の問題ではなく、バンド側からのリクエストなので絶対に認められないとの事。
セキュリティ側もクライアント側から請け負った条件を現場レベルで勝手に変更する事はないだろうし、下手に食い下がると退場処分になる可能性も想定されたため、ここは不本意ではありますが横断幕を回収する事にしました。
本日はおとなしく引き下がって、翌日の神戸公演以降は設置を許可してもらえるよう交渉していくしか方法は無いだろうナーと思った次第です。
見ていて気の毒なくらい意気消沈しているすし太郎。
よくよく考えれば、この横断幕はすし太郎だけでなく、多くの人の協力を得て出来上がった物です。
このまま設置すら出来ずに日本ツアーが終わってしまっては悲しすぎるでしょう。
自分の中の小梅太夫がチッキショーーーーーーーーー!!!と絶叫しました。
何か出来る事は無いでしょうか。
セキュリティ側の話では、これはバンド側からの要望との事なので、この話を主催者の株式会社クリエイティヴマンプロダクションに持って行ったところで、設置の可否について判断できる立場に無い、という回答で終わってしまうでしょう。
バンド側に直談判出来れば一番話が早そうですが、残念ながらそのようなルートを持っている人間は僕の周りにはいません。
ダメ元で#gunsnrosesというハッシュタグを付け、Twitter上で事の顛末をつぶやいてみました。
拙い英文で「友人がこういう横断幕を作ったんだけど、これは許可されていないとセキュリティが言うから撤去するしかなかったよ。なんで?」という内容を書いた記憶があります。
バンドの関係者も読めるように英語で投稿しましたが、英検75級レベルとも揶揄される僕の英語力ですので、本当に英文として成立しているかどうかも怪しいものです。
心優しいフォロワーさんから多くのリツイートを頂戴し、フォロー外の方からも熱い応援コメントを頂いたりしましたが、特に事態が好転する事もなく、横断幕は出る幕の無いまま(上手い事を言ったと思っています)ガンズのライヴがスタート。
生まれて初めて観るアクセル、スラッシュ、ダフのそろい踏みにいつしか横断幕の事を忘れている自分がいました。
すし太郎さん、ごめんなさいね。
事態が動いたのは、ライヴも中盤に差し掛かった頃でしょうか。
横断幕があった場所にガンズ側のスタッフが日本人スタッフを引き連れて登場しました。
Japangle考案者のロッピンさんと何やらやり取りをしています。
ステージではバンドが爆音で演奏中という事もあり、細かいやり取りまでは聞こえませんが、「ここにあった横断幕はどうした?」と訊いているようです。
いくつかのやり取りの末、ロッピンさんが横断幕をガンズ側スタッフに手渡し、スタッフはそのままバックステージに消えて行きました。
あとで聞いた話によると、バンド側が欲しがっているので、横断幕を譲り渡すように要求されたとの事でした。
バンド側の手に渡ったという事は、アンコールあたりでアクセルが横断幕を手に登場して、「これはクールだな。ありがとう」などと言ってくれるのかと予想する我々。
しかし、現実はその遥か斜め上を行くものでした。
スラッシュのギターソロ中、横断幕を手に戻って来るガンズ側スタッフ。
横断幕をロッピンさんに手渡すと、早く広げるようジェスチャーで促してきます。
どうやらバンド側のお許しが出た模様です。
喜び勇んで横断幕を広げ、最前列の柵に設置すると、なんとそこには…
アクセル・ローズのサインが!!!
あの癖のある独特の筆致で書かれたサイン。本物に間違いありません。
なんという事でしょう。
これもNot In This LIfetimeの一貫なのでしょうか。
あまりの事に横断幕周辺は一同放心状態。
申し訳無いのですが、目の前で咽び泣くように紡ぎ出されるスラッシュのギターソロもあまり耳に入って来ません。
スラッシュのギターソロの間に楽屋でサインを入れてくれたのだと推測しますが、あのアクセルがライヴ中にわざわざ時間を割いてくれた事が本当に奇跡です。
日本のファンがせっかく作ってくれたんだから、と横断幕にペンを走らせてくれたのでしょう。
みんなは知らないかもしれないけど、アクセルっていうのは本当に心が優しいやつなんだよ
アクセルに近い人達の口からこんな事が語られるのを何回見聞きしたでしょうか。
世間的には傲慢で尊大で変人なロックスターというイメージで語られる事の多いアクセルですが、そのパブリックイメージからは大きくかけ離れた実像を持っているようです。
今回、その真実の一端に触れる事が出来て、誇張ではなく震えるほど感動しました。
アクセル、本当にありがとう。
(写真:アクセルがライヴ中(!)に入れてくれたサイン)
サインを入れてくれただけでも奇跡なのですが、Knockin' On Heaven's Doorがエンディングに差し掛かった時、アクセルが横断幕の方に目をやったかと思うと
Japangle...Welcome back to the Japangle...
と読み上げてくれたのです。
アクセルの声でこのフレーズが聴けるなんて…。
日本ツアー初日からこんな事が起こっていいんでしょうか。
2月以降、次々と災難が降りかかるような気がしてなりません。
しかし、これほどまでに状況が好転したのは何故か?
その陰にはひとりの美女の活躍がありました。
この窮状に気付いてくれたのが友人のじょのさん(ブレイクダンスの達人にして英語堪能な美女)。
ガンズのマネージメントを担当するTeam Brazilのフェルナンドに「なんでこんな事になってるの?」とTwitter上で問い合わせてくださったのです。
それにすぐさま反応した暇人 有能なフェルナンド。
「それは手違いだ。申し訳ない」とすぐに対応を約束してくれたようです。
じょのさんのツイートが無ければ即日解決はありえないケースだったでしょう。
本当にありがとうございました。
しかし、ここでひとつだけ言っておきたいのは、セキュリティチームを責めるような論調にはなって欲しくないという事。
彼らは事故などが起こらないよう立ち回る事および不測の事態が発生した時にそれに対処する事を目的として配置されているスタッフです。
大規模なモッシュピットが起こった場合、クラウドサーフが発生した場合、体調不良者の発生、観客同士の喧嘩などに対して身体を張って対処をしてくれます。
ライヴ会場における安全確保を請け負っている身ですから、何かが起こってしまった場合に「横断幕が邪魔で迅速に対処できませんでした」という言い訳は通用しないでしょう。
今回は幸か不幸か横断幕周辺エリアで殺し合いのようなモッシュが起こった訳ではないので(5公演を通じて、横断幕設置エリアであるアップグレード専用スペースは平和そのものでした)、そのあたりも加味して横断幕の設置が許された部分はあるのではないかと思います。
そして、関東の公演では「あ。この横断幕は設置していいやつだ」とセキュリティ側が認識してくださったのも、大阪神戸で大きな事故がなかったおかげだと考えております。
前方エリアにいた方は気付いたかと思いますが、最後のParadise Cityのイントロが始まった時、ガンズ側のセキュリティ責任者が日本人セキュリティひとりひとりに握手を求めに来る姿が見受けられました。
「今日はよくやってくれた。あとひと踏ん張り頼むぞ」とでも言いたげな力強いその握手ひとつひとつに彼らが背負っている責任の重さが感じられ、安全というのは決して当たり前の事ではないのだなあ、という事を再確認いたしました。
セキュリティのみなさま、5日間本当にお疲れさまでした。
最後にひとつだけ大阪の思い出を語らせてください。
僕が泊まったのはとあるビジネスホテルなのですが、インターネットを通じて予約した際、『有料放送無料プラン』という夢のようなプランで部屋を取る事が出来ました。
有料放送無料プラン
なんという甘美な響きでしょう。
おのれの買い物上手ぶりに我ながらスタンディングオベーションを贈りたい気分になりました。
誰もが夢見るあの有料放送。
それが無料だなんてすごい話じゃないですか。
まあ、連日の深夜帰宅により有料放送なんて見ている暇はなかったのですが、無料なのであれば見なくても損はしない。
別に悔しがる事もあるまいと思い、普通に会計を済ませてホテルを後にしました。
が、くりこさんの何気ない一言により、驚愕の真実が発覚します。
あれ? わたしの方が1,000円くらい安いよ?
えっ。1,000円くらい安いの?
有料放送分を上乗せしてんじゃねえかよー!
チッキショーーーーーーーーーーー!!!
泣きました。
ただただ泣いた。
気が付くとひとりで泣いていました。
有料放送無料詐欺、ダメ、ゼッタイ。