読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Self Destruction Blues

いよいよ8月になりました。

今月は年間最重要イベントであるサマソニックの開催月。

万が一にも夏風邪などひかぬよう細心の注意を払って生活しております。

みなさまにおかれましても風邪などひかれませんようご自愛くださいませ。

 

早速ですが、今回からガンズのブートのレビューなぞをしていこうと思っております。

記念すべき第1回目のタイトルはコレっ!

 

 f:id:R__Y__O:20140801210304j:plainf:id:R__Y__O:20140801210331j:plain

 

Langleyレーベルからリリースされた『Self Destruction Blues』。

1988年6月1日、シアトル公演のオーディエンス録音物であります。

ちなみにLangleyレーベルは西新宿にあるDust an' Dreams(現Lighthouse)内のハードロック専門レーベルで、ガンズ関連作品でも優良音源を多数リリースしていました。

このシリーズのジャケットデザインを手がけたデザイナーさんをちらりとお見かけした事がありますが、非常に可愛らしいお嬢さんでした。

今でもブートのデザインなどを手がけているのでしょうか。気になります。

 

前述の通り、この公演は1988年6月1日に行われたもので、我らがGuns N' Rosesは英国のヘヴィメタルバンドIron Maidenのサポートアクトとして出演しました。

これはメイデンの『Seventh Son of a Seventh Son』アルバム(邦題『大家族』)に伴うツアーで、今はKey Arenaという名称になっている収容人数約2万人弱の大会場で行われた公演のようです。

前座とは言え『Appetite For Destruction』がチャートで急上昇している頃で、ガンズは最初から大歓声をもってオーディエンスに迎えられます。

この約2ヶ月後の1988年8月6日に同作は全米チャートの頂点に輝く訳ですが、このブートはその直前、バンドがまさに上昇気流に乗って破竹の快進撃で突き進んでいる様を見事に捉えています。

ちなみに裏ジャケに記載されている9月8日Concord公演というのは間違いで、セットリストやMCなどから6月1日のシアトル公演である事が確認されております。

昔のいい加減なブートならともかく、2000年代に入ってから日本の業者が作った物のしては珍しいミスだと思われます。

 

CDを再生して一番最初に気付くのは、演奏の荒さとテンポの速さでしょう。

メンバーの誰ひとりとしてスタジオと同じような演奏を心がけていないのがありありとわかります。

嵐のようなIt's So Easyが終わり、アクセルの観客に噛み付くような「踊りたいだろ?俺と踊りたいんだろ?俺の名前は…Mr,Brownstoneさ!」というMCで始まるMr,Brownstoneのかっこよさ。

チャート急上昇アルバムを引っさげて故郷に凱旋したシアトル出身ダフもイントロで「YO! YO!」と叫ぶなど、明らかにバンドがノっている様子がわかります。

 

そしてトラックリストではRapと記載されているのは、未発表曲のIt Tastes Good, Don't It?です。

ブート音源に馴染みの無い方でも、東京ドームのライヴビデオでRocket Queenの途中でアクセルが披露するラップといえばわかって頂けるのではないでしょうか。

ロングバージョンもあるのですが、ここで聴けるのはいわゆるショートバージョンとして知られている1分足らずのバージョン。

この勢いのあるラップからのRocket Queenの流れは脱糞するくらいかっこいいです。

 

ちなみにアクセルはこのIt Tastes Good, Don't It?の歌い過ぎで喉を壊し、この公演の少し後から休養を余儀なくされます。

そのせいで当初7月に予定されていた初来日公演は同年の12月へ延期される事となり、その間にアルバムがとんでもない事になったおかげで、ガンズは初来日にして日本武道館のステージに立つ事になる訳であります。

アクセルの不調の兆しはこのライヴでもすでに見受けられ、声が非常に荒れています。

ガラガラとまでは言わないまでも、いつも以上にざらついたエッジのある声質となっており、それが予期せぬ魅力をもたらしております。

 

アクセルも自分の声の異変に気付いているのか、Knockin' On Heaven's Doorの冒頭やSweet Child O' MineのWhere do we go?パートなどで意識的に喉を休めようとしているのですが、勢いにノっているバンドにつられてすぐに歌唱は激しい方向へ振れてしまいます。

その絶妙な静と動のコントラストがこの公演を特別なものとしていると言っては過言ではありません。

いつもの金切り声に頼らず意識的に中音域を使ったヴォーカルも新鮮だし、アクセル特有のシャウトも喉の不調のせいか壊れる寸前の危うさがあって妙に魅力的です。

 

特筆すべきは後半に演奏される大ヒット曲Welcome To The Jungleでしょう。

Sweet Child O' Mineはこの時点では「New video」と紹介されており、そこまで認知度はありませんが、Welcome To The Jungleはすでに大ヒットを記録しており、間違いなく観客に最も認知されている曲で、客席のテンションも一気に急上昇。

これまでの熱演でアクセルのテンションも上がりきっており、喉も裂けよとばかりに冒頭の「D'you Know where you are?」から大絶叫。

咆哮と呼ぶのが相応しいようなヴォーカルを聴かせてくれます。

数ある同曲のライヴバージョンの中でも最高の部類に入る名演でしょう。

 

持ち時間もわずかとなり、アクセルは最後の曲を観客の投票で決めます。

NightrainとParadise Cityのどちらを聴きたいか、観客の声援の大きさで決めようと言うのです。

歓声はどう贔屓目で見てもParadise Cityの方が大きかったように思うのですが、アクセルは迷う事無く「Nightrainの勝ちだ」と宣言し、最終曲Nightrainをコールします。

常識人であるところのスラッシュはParadise Cityのイントロを弾き始めますが、アクセルは「おい!待て待て待て!Nightrainの勝ちだっつーの!」と演奏を強制終了。

改めてNightrainの開始を宣言するのです。

Paradise Cityを聴けなかったオーディエンスのみなさんには申し訳ありませんが、「アクセル!単にNightrain歌いたかっただけちゃうん?」と言いたくなるような鬼気迫るNightrainの迫力の前には何も言えません。

冒頭から「Loade like a freight train WOO!!!」ですよ。テンション高過ぎでしょう。

 

スティーヴン脱退後、メンバーは「マットが入ってバンドが成長した。ガレージバンドからスタジアムバンドになれたんだ」と言っています。

たしかにそれもひとつの真実でしょう。

毎晩数万人単位の観客を満足させるためには、コンスタントに80点~90点を出せるバンドにならなくてはいけません。

しかし、オリジナルのガンズには計算できない凄さがありました。

30点の日もあれば150点の日もある。

マットを加入させる事によってガンズは安定を手に入れましたが、それと引き換えに魔法のような夜を手放してしまったような気がしてなりません。

ブートを収集するのも、そんな魔法のような演奏を探して求めているからなのかもしれませんね。

 

CDの最後にはボーナストラックとして伝説の88年Limelight公演から4曲を収録。

当時はLimelight公演を完全収録したブート『P.O.D.』はリリースされていなかったので、この4曲が聴けるだけでも驚愕でした。

Langleyレーベルのオーナーさんに聞いたところによると、当時イギリスで買ったカセットテープに入っていた音源のようなのですが、『P.O.D』が出回った今ではあまりありがたみを感じないかもしれません。

 

ガンズのブートには定番とされる音源が多数ありますが、もしも「定番以外ならどれが一番オススメ?」と訊かれたら、この『Self Destruction Blues』を挙げると思います。

そのくらい演奏の勢いが凄まじいです。

ライヴにスタジオ盤と同じクオリティを求める方には向かないかもしれませんが、ライヴの聖なる1回性に重きを置く方なら絶対にオススメです。

是非この荒々しい5人の若者の姿に触れてみてください。

絶対に損はしないと思います。