あなたに会えてよかった

どうも。僕です。
大変ご無沙汰しております。
ブログを放置していたこの数ヶ月、ガンズのリユニオン公演やアクセルのAC/DC参加など夢のような出来事が立て続けに起こりました。
それでも当ブログが更新されなかったのは、ひとえにわたくしは怠惰な人間だからであります。
そんな怠惰なわたくしではありますが、ほんの少しだけやる気が出て来た今日この頃ですので、この機を逃さずえいやっ!と更新したいと思います。

今回は音楽とはあまり関係の無いお話。
しかも、あまり綺麗とは言えないお話なので、そういうのが苦手な方やお食事中の方は晴れて二児のパパとなったファンキー加藤さんのオフィシャルブログへどうぞ。↓

 

ファンキー加藤オフィシャルブログ Powered by Ameba

 

時は遡り2015年3月。
数日前に『最強決定戦』と銘打たれたThrash Dominationを観に行き、「いやー。やっぱり最強はSodomだナー」などと言っていたある日のことです。

いつものように朝目覚めると、なんとなく世界の様子に違和感が。
その違和感の正体に気付かぬまま、いつものように朝の情報番組を見ながら朝食を。

  ん? テレビの音量が妙に小さいぞ。
  何を言っているのかまるでわからん。

テーブルの上にあったテレビのリモコンをつかんで音量↑ボタンを0.6秒ほど長押しするわたくし。
あれ? 音量いつもとかわらない…?
その瞬間、朝から感じていた違和感の正体に気付き、全身から血の気が引いていくのがわかりました。

 

  俺、耳聞こえてないじゃん…

 

テレビの故障という可能性もあるので、耳元で指を鳴らしてみると…
こんな近くで音を出しているのに明らかに音量が小さい。
まるで耳に膜がかかったような感じです。

これはやばい。
いや、ついにこの日が来たか、と言った方が正確でしょうか。
ライヴ、携帯音楽プレイヤーなどで常に大きな音に曝され続けた我が鼓膜。
先日のThrash Domination最強決定戦でその限界をついに超えてしまったということなんでしょう。

とりあえず仕事に向かいつつも頭の中は我が聴力のことでいっぱい。
スマホ音響外傷やら突発性難聴だのを調べまくっておりました。
すぐに治療しないと回復が難しいこと、治療しても聴力が戻らないケースがあることなどがわかり、希望と不安がごちゃまぜに。
場合によっては連日点滴を受ける必要があるらしく、仕事休めるかナーなどという新たな不安も噴出。

まあ、怖がってばかりいても仕方がないので、仕事を中抜けさせてもらって近所の耳鼻科に駆け込むことに。
訪ねたのは職場からほど近い耳鼻科クリニック。
白を基調とした清潔感を感じさせる内装に「わたくしのような社会の屑が足を踏み入れてしまい申し訳ありません」と恐縮しながら待つこと数十分。
診察室から出て来た看護師さんが「りょうさん(実際には本名)どうぞー」とわたくしの名前を呼んでくださり、「うーん。やっぱり聞こえにくいナー」と思いながら診察室へ。

診察室に入ったわたくしを出迎えてくれたのは、大学病院あたりだったら中堅よりも少しだけ上のポジションかナーと思われるような年齢の男性医師。
とりあえず勧められた椅子に座り、今までの経過を説明します。
朝起きたら耳の聞こえが悪くなっていたこと、数日前にライヴに行って非常に大きな音を数時間に渡って耳にしたこと、10年ほど前にもライヴの後に聞こえが悪くなったことがあり、その時は耳鼻科で投薬などを受けて回復したこと、などです。


わたくしの話を電子カルテに打ち込みながら聞いていた医師、くるりとこちらに向き直り、「まずは耳の中を見せてください」と一言。
えらい!
わたくしの話から音響外傷が原因であることは十中八九間違い無いところであるにもかかわらず、きちんと自分の目で確認してから診断を下す姿勢。
診察の基本である視診をおろそかにしないというプロフェッショナルな態度にいたく感激したわたくし。
安心してこの先生に身体を任せようという気持ちになりました。


先生の方に耳を向け小首を傾げる姿勢になると、なにやら専用の器具のような物で我が耳内を観察し始める先生。
どうですか先生?綺麗なもんでしょう?
これから始まる音響外傷の治療へ想いを馳せつつ、そんなことを考えていると、先生の口から思いもよらぬ衝撃の一言が。


  「あー。耳垢ですねー」


なぬー!耳垢っ!
そんな訳ないでしょう!
よく見てくださいよ!


などと言えるはずもなく、小首を傾げたままの姿勢で無言を貫くわたくし。
音響外傷という診断に揺らぎが生じて動揺しているわたくしに落ち着く間も与えず、


  「吸引しますねー」


と別の器具を我が耳内へ突っ込んでくる先生。
角度的に見えないのでたしかなことは言えませんが、おそらく耳用のダイソン掃除機のようなその器具。
カラカラと小気味の良い音を立てながら何か(先生の言葉を信じるならば耳垢)を吸い込んでいきます。
これは気持ちいい。
我が家にも欲しいナー。


しかし、カラカラと音を立てて吸い込まれていく程度の耳垢で聴力が低下するものでしょうか?
耳垢は関係なくて、やはり音響外傷が原因なのでは?
そんな意見を述べようとするわたくしを制止するかのごとく、「動かないでくださいねー」と言いながら新たな第三の器具を我が耳内へ挿入してくる先生。
こちらはもうされるがままです。


時間にして約1分ほどだったでしょうか。
特に痛みもないまま器具が我が耳内から引き抜かれました。
先生の方を見ると、手にしたピンセットのような器具で採取したとおぼしき物体を銀のトレイの上に置いたところ。
その物体をまじまじと観察すると、10円玉より少し小さいくらいのサイズを持つ黒く平べったい塊。


  こ…これが耳垢ですと…


たしかにこれが鼓膜に張り付いていたのであれば、聴力が落ちることもあり得るか…。
我が耳内より生まれ出た異物に驚愕しているわたくしに対し、


  「いるんですよねー。耳掃除の時に耳垢を奥に押し込んじゃう人が。こうやって奥に溜まっちゃうんですよ。」


などとサラリと説明し、「証明終わり」とでも言いたげな表情の先生。
いやいやいやいや!
知ってますよ、耳垢を押し込んじゃうタイプの人がいるのは。
テレビの情報番組でその危険性に警鐘を鳴らしてるのを見たことありますよ。
わたくしはそれを見ながら、馬鹿だナーと思っていた人ですし、どちらかといえば非常にイケている巧みな耳かきをしていると自負していましたし、もっといえば正しい耳かきのやり方を他人にお教えする側の人間なのではないかと思っていたくらいでして。
それなのにこんなところに来たばっかりに、わたくしが押し込んでしまうタイプの馬鹿だと判明してしまいました。
先生、この責任はどう取ってくださるおつもりですか。


などと理不尽なことを考え始めた修羅の心境のわたくしに対し、「どうですか?聞こえるようになりましたか?」と医師としての最後の役割を果たそうとする先生。


いやいやいやいや!
そりゃあね、耳垢が詰まっていたことを認めるのはわたくしとしてもやぶさかではありませんがね、実際に証拠もありますからね。
でもね先生、あたしの耳はね長年爆音で音楽を聞いてきた耳なんですよ、その影響が皆無ってことはないでしょうよ。


そんな想いを端的に表現した言葉としてわたくしの口から出たのは


  「まだ聞こえが悪い気がします」


それを聞いた先生、0.5秒ほど苦虫を噛み潰したような表情を見せた後、すぐにプロの顔に戻り、


  「そうですか。では聴力検査をしましょう」


こちらとしても望むところです。
先生の診断とわたくしの自己診断。
どちらが正しいか白黒つけようじゃないですか。
男と男の真剣勝負です。

電話ボックスのような箱に入り、ヘッドホンを装着するわたくし。
この箱に入るのは約10年ぶり2回目。
Adler's Appetiteのライヴで耳をやられた時以来であります。
検査内容はごく簡単。
健康診断などで行われる「音が聞こえたらボタンを押してくださいねー」タイプのやつです。
あれの精密なものだと考えていただけばよいでしょう。


ヘッドホンからピーだのポーだのという音が聞こえてくるたびにボタンを押していくのだけれど、無音の状態が続くと「本当は音が鳴っているのに自分が聞こえていないだけなのでは?なぜなら俺は音響外傷だからだっ!」と非常に不安になってしまい、難聴の障害者手帳を不正に 補聴器って幾らくらいで買えるんだろうナーなどと気もそぞろになりながら検査終了。
とりあえず一度ロビーに出て結果が出るのを待つことに。

 

ほどなくして再び診察室に招き入れられるわたくし。
いよいよ決着の時。
どんな言葉よりも検査結果がすべてを雄弁に物語ってくれるでしょう。


椅子に座ったわたくしに対し、パソコンに表示された検査結果を指し示し、先生が説明を始めました。


  「えー。先ほど受けていただいた聴力検査の結果ですが…」


いよいよ運命の時。
この先生は良い補聴器業者を紹介してくれたりするでしょうか。


  「正常ですね。」


それを聞いたわたくし、一拍の間をおいて一言。


  「ありがとうございましたっ!」


深々と頭を下げで診察室から退場。
粛々と診察料を支払って職場に戻りました。
今までの話を総合すると…


【自己診断】
音響外傷


【最終診断】
耳くそ


先生、本当にありがとうございました。
これからはきちんとした耳掃除の方法をマスターしたいと思います。
みなさまにおかれましてもお気を付けください。