Welcome Back To The Japangle Part 5

明けましておめでとうございます。

僕です。

もう3月ですし、新しい年がとっくに明けているのは百も承知ですが、本日の話題は去年の事です。

来年の事を話すと鬼が笑う」などと申しますが、なぜ鬼は笑うのでしょうか。

鬼にしてみれば「お前はここで死ぬのに、そんなお前が来年の話をするなんてウケるー。まぼろしー」という事でしょうか。

鬼、ブルータルすぎるでしょう。

 

あ。3月で思い出しました。

以前に当ブログでも紹介した事のあるGuns Love Rosesさんのワンマンライヴがあります。

しかも来週の月曜日。もう明後日?

 

2018年3月12日(月)

渋谷duo MUSIC EXCHANGE

開場 18:00   開演 20:00

 

20時スタートという社会人にも優しい時間設定となっております。

開場後は音楽ライター増田勇一氏によるDJ、ピクセルアーティストtakekiyo氏による展示等も予定されているので、興味のある方は下記リンクをご参照ください。

チケット予約はtwitterのバンド公式アカウントおよび各メンバーのアカウントでも受け付けているようです。

 

http://www.gunsloveroses.com/Guns_Love_Roses/Upcoming_Show.html

 

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(販売予定のプログラム。限定100部だそうです)

 

あ。去年の話でしたね。

2017年という名の365日。

本当に思い出深い一年になりました。

そう。ついに来たんです。

 

だれが。

 

アクセルとスラッシュがいるガンズ・アンド・ローゼズが。

 

わたくしのような後追いファンにとっては夢のまた夢。

それがアクセルとスラッシュが同じステージに並び立つ姿。

スラッシュとダフ、ダフとイジー、ダフとスティーヴンが並び立つ姿は観た事のあるわたくしですが、アクセルとスラッシュだけは一生無理かもしれないと思っていました。

(すべての組み合わせにダフが絡んでいるのがすごい。彼こそバンドの潤滑油!)

 

が、2015年にアクセルとスラッシュが和解したというニュースが駆け巡り、そこからとんとん拍子に話が進み、2016年1月にはついにスラッシュとダフを迎えたラインナップでステージに立つ事が発表されました。

2016年4月に実現した奇跡の再合流、そのツアーがついに我が国にもやって来たわけであります。

2017年最初の月はまさに阿鼻叫喚と言える様相を呈して過ぎ去り、ガンズは一生忘れられない思い出と金銭的困窮を残して次の公演地で旅立って行きました。

その記憶は日本ツアー約1年が経った今も、わたくしの脳裏に鮮明に焼き付いているわけであります。

 

さて、『Welcome Back To The Japangle』と題して書き散らしていた駄文シリーズですが、今回で一区切りつけたいと思います。

詳細なライヴレポなどを書く技量は持ち合わせておりませんので、今回のツアーについてざっくりした感想を垂れ流していきます。

基本的にはわたくしの妄言となりますのでご容赦ください。

 

 

2016年にスタートして以来、世界中でソールドアウト連発となった今回のリユニオンツアー。

ツアータイトルとなった『Not In This Lifetime』は、スラッシュとの復縁の可能性について尋ねられたアクセルが発した「この人生ではありえないね」という言葉が由来となっています。

「再結成が実現する前に、俺かあいつのどちらかが死ぬ事になるだろう」とまで言い切っているので、当時のアクセルとしてはスラッシュとの復縁は検討する価値も無いほどのナイネ枠だったのでしょう。

だからこそ今回のスラッシュとの復縁は凄まじい衝撃をもって迎えられ、ロック界最大の再結成劇として大歓迎されるツアーとなった事は疑いの余地はありません。

そして、そのツアーのタイトルとして『Not In This Lifetime』以上にふさわしい物は誰も考えられないのではないでしょうか。

リユニオン後初の公の舞台となった2016年4月1日のTroubadour公演。

我々ガンズファンは、インターネットを駆使して歴史的な一日の情報を検索しまくっていたわけですが、会場の看板に掲げられた『Not In This Lifetime』の画像を見た瞬間、脳髄が痺れて訳がわからなくなり、気が付いたらボブ・サップにKOされた曙のように床に倒れ臥していたのはわたくしだけではないでしょう。

誰がツアータイトルとして提案したのかは定かではありませんが、あのタイミングであのフレーズを持ち出してくるセンスに心底痺れました。

今までは良くも悪くも戦略的に甘く、メタリカのような大物バンドと比べるとファン心理がわかっていないような部分が目立ったガンズですが(でも、そういうのに振り回されるのも嫌いじゃなかった)、今回はかなりしっかりしたブレイン役が付いているのではないかと思ってしまうような見事な演出でしたね。 

 

 

アクセルの言葉を額面通り受け取るならば、この人生ではありえなかったはずのスラッシュとの再合流。

最初は「また喧嘩したらどうしよう…」と心配をしたものですが、アクセルがスラッシュの脇腹をくすぐったり、二人で顔を見合わせて微笑み合ったりしており、「あ。心配して損したわ」と思うほど仲睦まじくツアーを続けるガンズ御一行。

そのツアーは北米中米南米を周り、2017年1月についに日本へ。

夢にまで見たアクセルとスラッシュが並び立つガンズのライヴを体験できるわけであります。

 

もちろんわたくしも観ましたよ。

全5公演。

泣きましたよ。

2012年のロックの殿堂入りの際、式典への出席を表明していたアクセルがの世紀のドタキャンにより、「この機会を逃したら本当に一生無理かもナー」と絶望したあの日の落胆を返して欲しいくらい普通にステージに並び立ってやがりましたよ。

「Not in this lifetime? そんなこと言ってないヨー」とでも言いそうな顔してましたよ。

 

しかし、ついに長年の夢が叶ったわけなのですが、アクセルとスラッシュが並ぶ光景を目の前にしても「ありえない出来事」を目撃しているという感じはしませんでした。

来日するまでに写真や映像に触れる機会が多大にあったというのも一因なのかもしれません。

もちろんあの二人が関係を修復し、再びガンズ・アンド・ローゼズのメンバーとしてツアーに出ているというのはとてつもなく嬉しい事です。

「もう一緒にバンドなんてやらなくてもいいから、どちらかが死ぬ前に仲直りしなよ!そうしないと絶対後悔するよ!」と何度思った事でしょうか。

 

でも、やはりあの光景は「この人生ではありえない事」だとは思えませんでした。

だって、実際こうして実現しているわけですから。

あれは「ありえない事」ではなく「実現する可能性が極めて低い事」だったのではないか。

「屁理屈ばっかり言ってんじゃねーよ!ぶっ飛ばすぞ!」とお叱りを受けそうですが、わたくしはそのような事を思ったわけであります。

 

例えばPanteraというバンドがいましたね。

彼らはギタリストであるダイムバック・ダレルの悲劇的な死により、再結成の道が閉ざされているバンドです。

いや、厳密に言えば新しいギタリストを入れて再結成する事は「ありえない事」ではなりません。

しかし、ダイムバック・ダレルを含んだ誰もが知る形でのPanteraの再結成という可能性については「ありえない事」だと言わざるを得ないでしょう。

そこには死という不可逆的な事実が厳然として横たわっており、人智を超越した何かの力が働かない限り、それを変える事は不可能だと言えます。

それに対し、ガンズ・アンド・ローゼズは幸運にもメンバーが全員生存しており、本人たちがその気になりさえすれば(それが難しいのだが)、『Appetite For Destruction』制作時の黄金メンバーで集まる事だって可能なわけです。 

 

もう自分で書いてて「理屈ばっか捏ねてんじゃねー!」と嫌になりますが、そのように思ってしまったのだから仕方ない。

そういうわけでして、「Not In This Lifetimeよりもしっくり来る表現があるのではないか」という思いが拭えないまま来日公演後の日々を過ごしておりました。

まあ、さすがにファンの方をつかまえて「ねえ!あれはNot In This Lifetimeって感じじゃなかったよねぇ?ねえ?」などと同意を求めるような無粋な真似はしませんでしたし、そもそもあの時の感情を表すのにふさわしい表現を見つけることすら出来ていなかった訳です。

 

そんな思いを抱えたある日、iPodで何気無く再生したとあるバンドのアルバム。

 

Nine Inch Nails

 

世界を代表するインダストリアルロックバンドであります。

このバンドの音楽に馴染みの無いガンズファンでも、ギタリストのロビン・フィンクの名前には聞き覚えがあるのではないでしょうか。

そう。『Chinese Democracy』期のガンズの看板ギタリストであり、名曲Betterの作曲者でもある彼です。そして、彼の脱退後、その仕事はDJ Ashbaへと引き継がれることになります。

アクセル自身もNine Inch Nailsの大ファンであり、1991年にはツアーのサポートバンドに抜擢するほどの惚れ込みよう。

Chinese Democracy』はNine Inch Nails等のインダストリアルロックから多大な影響を受けたアルバムになるのでは?という憶測も流れていました。

 

Nine Inch Nailsの名ライヴ盤に『And All That Could Have Been』という作品があります。

名曲の数々をこれでもかと言わんばかりにビルドアップしまくった演奏が聴けるベスト盤代わりにもなり得る一枚。

Nine Inch Nailsでしたっけ? 聴いてみたいんだけど、何から買ったらいいかな?」という人がいたら、わたくしは間違いなくコレを推します。

このタイトルとなっている『And All That Could Have Been』を英検769級レベルのわたくしが訳すと…

 

 

そうだったかもしれないすべて

 

 

 ありえたはずのすべての事

 

 

などという感じになるでしょうか。

もっと良い訳がありえるはずなのですが、わたくしの能力ではこれが限界です。

 

 

ありえたはずのすべての事

 

 

このフレーズが頭に浮かび、すべての違和感が霧散しました。

ガンズがやろうとしているのはまさにこれではないか?

 

「あの頃の再現」でもなければ「ここから先の未来」でもない。

若かった自分たちが自らの手で壊してしまった「ありえたはずの自分たち」の姿。

『Not In This Lifetime Tour』は、存在し得たはずのガンズの姿をファン、関係者、そして他ならぬバンド自身で確認しようという作業なのではないかと思いました。

そして、その作業は極めて慎重に行われているように見えます。

 

 

もう二度と失敗しないように

 

もう大切な物を失わないように

 

 

自分たちがまだやり直せることを証明するかのようなツアーでした。

「世界で一番危険なバンドじゃなかったのかよ?」という愚問は放っておきましょう。

彼らはもう20代の若者じゃないんです。

個々のエゴのぶつかり合い、遅延、キャンセル、ドラッグ、アルコール。

そういった悪癖が排除され、極めてプロフェッショナルな姿勢でツアーが進んでいるように見えました。

特にアクセルに関しては、長年トラブルの種となっていた遅刻やキャンセルは一切ありませんでしたし、コンディションが明らかにベストではない時でも、プロの水準を保とうとテクニックを駆使して声を振り絞る姿は感動的ですらありました。

2年近くに渡るツアーの中で、アクセルがマイクを叩きつけてステージを去る場面は一度も無かったと記憶しています。(フランスでセキュリティに対してキレたケースはあり)

“ナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけた”の代表格のようなアクセルでしたが、年々丸くなってきた(体型のことではなく)のか、笑顔の写真を多く目にすることが増えたので安心しております。

まさか猫ちゃん帽子かぶって出て来て照れ笑いするようなおじさんになるとは夢にも思わなかったけれど、アクセルには幸せになって欲しいという気持ちしかありません。

 

 

音楽のことに話を移しましょう。

リユニオンツアー開始以降、“November Rain”の前にPink Floydの名曲“Wish You Were Here”がインストゥルメンタルバージョンで演奏されることが定番となっています。

精神を病んでしまったPink Floydシド・バレットのために書かれた『あなたがここにいてほしい』という邦題で知られる超有名曲です。

基本的にインストゥルメンタル曲はあまり好みではないわたくしですが(でも、一番好きなメタリカの楽曲は“Orion”です)、スラッシュとリチャード・フォータスのギターが美しく絡み合う名演に毎回感動させられました。

 

この曲をセットリストに加えた理由については、元々はVelvet Revolverがレパートリーとしていた楽曲であり、スラッシュもしくはダフが「これ演ってみない?」と提案したのではないかと推測できます。

2016年4月、ガンズが“Wish You Were Here”を演奏したと聞いた時、これは2015年に亡くなった元Stone Temple Pilots~元Velvet Revolverのスコット・ウェイランドへのトリビュートではないかと思いました。

オリジナル版ではヴォーカルが入っている楽曲ですが、それをあえてインストゥルメンタルとして演奏することで、スコットという素晴らしい声を失った悲しみを表現しているのではないかと。

なによりも『あなたがここにいてほしい』というタイトルがすべてを表していると言えるでしょう。

 

その対象はスコット・ウェイランドだけに留まらず、プリンス、レミー・キルミスタークリス・コーネルマルコム・ヤンググレン・キャンベルなど喪われた音楽界の偉大な才能を追悼しながらツアーは続きました。

(人間だけでなく、アクセルの犬、ダフの犬といった愛すべき無垢な魂まで追悼していた事も書き添えておきましょう。)

“Wish You Were Here”の美しい調べに身を任せていると、「お前らもここにいて一緒に楽しんでくれればいいのに」という想いが聴こえてくるような気がします。

亡くなった人達ばかりではなく、過去の確執等、様々な理由でここにいられなかった関係者。そんな人達に向けても演奏されていたらいいな、と願わずにはいられません。

 

アクセルのAC/DC参加についても同じような事を考えてしまいました。

参加した理由については色々あるのだろうけど、その理由を突き詰めれば、アクセルはAC/DCにここにいて欲しかったんじゃないかな、と。

大好きなAC/DCがこのまま終わってしまうくらいなら、多少の不名誉やバンドを掛け持ちする事による肉体的疲労などは喜んで背負えるリスクだったのではないでしょうか。

ありえたはずのガンズ・アンド・ローゼズを取り戻し、その一方でありえなくなりかけていたAC/DCの未来を繋ぎ留めたアクセル。本当に凄い男です。

噂されるAC/DCの新作は本当に出るのでしょうか。

動向を注視していきたいと思います。

 

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(Wish You Were Here~Layla~November Rainの流れは絶品)

 

 

今回のブログを書くきっかけとなったNine Inch Nailsの『And All That Could Have Been』ですが、その最後に収められている名曲“Hurt”はこんな歌詞で締めくくられます。

 

 

  If I could start again

  A million miles away

  I would keep myself

  I would find a way 

 

 また最初からやり直す事が出来るなら

 100万マイル離れていたって

 俺は正気を保って

 道を見つけ出すのに

 

 

まあ、例によってわたくしの英語力なのでアテになりませんが、今のアクセルがこのような考えを持ってバンドに向き合っていても不思議ではないなと思ってしまいます。

ありえたはずのすべてを確認した後、彼らはどのような未来を選択するのか。

そろそろ新しい音楽も聴きたいところではありますが、ガンズに関しては「商品が店頭に並ぶまでは確かな物は何ひとつ無い」くらいの姿勢で向き合わないといけません。

彼らが最良の未来を選択出来ますように。

 

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 (2017年1月22日 神戸公演より)

 

最後にひとつだけどうでもいいエピソードを紹介させてください。

わたくしの知り合いにS君という人がおりまして、仮に名前をすし太郎としましょう。

熱心なガンズファンで非常に正義感の強い男です。

そんなすし太郎、ガンズ神戸公演で転売業者が暗躍し、ご当地限定の武者ティーシャーツがあっという間に完売したと知り激怒。

太宰治流に書けば

 

すし太郎は激怒した。

必ず、かの邪智暴虐の転売業者を除かねばならぬと決意した。

すし太郎には市場の論理がわからぬ。

すし太郎は、村の牧人である。

 

というところでしょうか。

村の牧人かどうかは知りませんが。

まあ、そんなわけで転売業者への怒りに燃えたすし太郎。

これ以上、貴重なご当地限定ティーシャーツを転売業者に渡してなるものかと一念発起。

次の横浜公演ではフジテレビ系列めざましテレビのキャスター級の早起きをして物販列に並ぶ決意をしました。

 

まだ夜も明けぬ新横浜。

熱心なベビメタファンや転売業者に混じって列に並び続けるすし太郎。

気のいいすし太郎は知り合いからもグッズの購入をガンガン依頼され、正午を過ぎるあたりになると、その光景を見ていた見知らぬ人から「あの人に頼むとなんとかなるらしい」などと不幸な誤解をされる始末。

 

転売業者への怒りだけを原動力に並び続けたすし太郎。

朝から何時間待っていたのでしょうか。

ついにグッズ販売開始の時間であります。

その頃、心優しきアップグレードチケット購入者に横浜限定ティーシャーツをお願いしておいたわたくしは、新横浜駅近くのコーヒー屋さんで熱々のコーヒーなどを飲みながらぬくぬくと談笑しておりました。

ライヴ開始まで体力温存であります。

 

コーヒーのおかげで身体の芯から温まった我々。

すし太郎の買い物がそろそろ終わると予想し、転売業者との戦いをねぎらうために会場に戻る事に。

多くのガンズファン、ベビメタファンで賑わう横浜アリーナ前で待っていると、物販ブースから出て来るすし太郎の姿を発見。

他の人達から頼まれた分も含め、物凄い量のティーシャーツやタオル、パンフレット、リトグラフなどを持ってよろよろと歩くすし太郎。

少し手伝ってやろうと思い、すし太郎に向かって走り出そうとした瞬間、衝撃的な事実に気付き、思わず足が止まりました。

そう。大量のグッズを持って物販ブースから出て来たすし太郎の姿は…

 

 

どこに出しても恥ずかしくない立派な転売ヤーだったのです

 

 

転売業者を憎むあまり転売ヤーと同じ姿になってしまったすし太郎。

なんという皮肉でしょうか。

あまりの事に泣きました。

ただただ泣きました。

気が付くとひとりで泣いていました。

 

 

転売、ダメ、ゼッタイ