タワレコで買えないヤツ

どうもこんにちは。

相も変わらず更新を怠っているうちにブラジルW杯も終わり、7月も数日を残すばかりとなりました。

更新する意思は多大に持っていたのですが、それに行動が伴わないという…ネ。

まあ、社会の屑の言い訳であります。

 

そんな話は脇に置いておいて、みなさんはもう観に行かれましたでしょうか。

もしくは購入してご自宅で鑑賞されましたでしょうか。

アレですよアレ。例の。いや、脱法とかではなく。

ついに陽の目を見る事になったGuns N' Rosesの『Appetite For Democracy』の事であります。

 

ガンズのリリース物を手にする時はいつだって興奮しますが、今回は1992年の東京ドーム以来のライヴ映像。

これは興奮するなと言う方が無理な話でしょう。

劇場へも2度ほど足を運びましたが、自宅のしょぼいテレビで観ているのが馬鹿らしくなるほど素晴らしい3D作品でした。ぶっ飛びます。

Estrangedには特に感銘を受け、映画館で2回も涙する始末。まさに名演。

お客さんの口が歌詞をなぞって動くのがよく見えて感動的なんですよ。

ファンにとってEstrangedがいかに大きな意味を持つ曲なのかという事がよくわかる。

そして、倉庫で長いこと埃をかぶっていたこの曲を引っ張り出して、どこに出しても恥ずかしくないくらいに磨き上げてくれた現メンバーたちに感謝。

こんなに素晴らしいバンドに成長したにも関わらず、いまだに旧メンバーとの再結成を期待されてしまうアクセルの胸中を思うと非常に心が痛むのだけれど、そんな意見を封じ込めるには新しい音楽で世界をねじ伏せるしかないよね。

という訳で、今年後半もしくは来年早々に新作をリリースしてくれる事を大いに期待しております。

 

待望のライヴDVDリリースによりガンズ熱が高まっている今日この頃。

そのガンズ熱にさらに油を注いだのが、Twitterでのフォロワーさん諸氏のガンズ愛あふれる素晴らしいブログでした。

深い知識と洞察力に裏打ちされた「これぞ決定版!」と喝采を上げたくなるようなアクセル・ローズ論。

そして、時には少女のような、時には母のような、「これが愛だ!」と世界のまんなかで絶叫したくなるような暖かいブログ。

自分が逆立ちしようが100回生まれ変わろうが到底敵わないであろうと思える素晴らしい文章の数々。

 

同じ土俵で勝負する度胸は僕にありません。

しかしながらガンズについてのブログは書きたい。

そんな葛藤をすること数日。

ふと思いついたのが、ガンズのブートレグについて書いてみるのはどうだろう、という事でした。

いわゆる海賊盤というヤツです。

もちろん僕よりもガンズのブートに精通している人は山ほどいるでしょうし、大手を振って歩けない業界の事を書くのはどうかと一瞬思ったのですが、決して嫌いな話題ではありませんし、ブートの感想を勝手気ままに書き散らすヤツがひとりくらいいてもいいのかなあと開き直り、そのようなアプローチを採用させていただく事としました。

 

ブログの方針としては、毎回適当に選んだブート作品を独断と偏見に塗れながら紹介していこうと思っているのですが、今回は初回ですので、自分とブートとの出会いなどを思い出すがままに綴っていきたいと思います。

題して『ブートと俺』、カスみたいなタイトルですが、しばしお付き合いください。

 

 

今を遡ることウン年前、僕はいたって健全なロック好き高校生でした。

そんなロック少年がロックグッズを欲するようになるのは自然の摂理。

好きなバンドのティーシャーツを着用したり、部屋に好きなアーティストのポスターを貼りたくなったりした僕は、ロック関連グッズを販売しているお店を探す事にしました。

当時は現在のように誰でもインターネットを使えるような状況ではなかったので、音楽雑誌『Music Life』などに広告を出していたお店をチェックし、西新宿にあるディスクロードというお店がポスターや雑誌、ティーシャーツなどを取り扱っているようだったので、学校帰りに足を運んでみる事に。

 

生まれて初めて足を踏み入れた西新宿はウブな高校生にとっては少々いかがわしい界隈だったけれど、幸いディスクロードは大通りからさほど遠くない場所にあったので、それほどハードルが高いお店ではありませんでした。

今にして思えば、西新宿界隈でも随一と言えるほど健全なお店で(多少はブートCD、ブートビデオも扱ってましたが)、悪く言えばミーハーな雰囲気。

当時流行していたブリットポップが好きな女の子でも入れるようなお店だったと思います。

他のブート屋ではあまり扱っていない海外ロック雑誌が豊富だったので、閉店が惜しまれるお店であります。 

 

ディスクロードでの買い物を終え、その周囲を少し散策してみると、かなりの密度でCD屋やレコード屋が密集している事がすぐにわかりました。

いくつかお店に足を踏み入れてみると、そこで売られているのは変なジャケ写のチープな作りのCDの数々。しかも妙に高い。

お店のたたずまいとバンドのディスコグラフィーに載っていないCDの数々、それらを総合して考えれば、高校生といえども非合法の香りを嗅ぎ取らずにはいられません。

 

ここは立ち入ってはいけない場所だ

 

怖くなって逃げるように西新宿を後にしました。

その後、ロック雑誌などを愛読するようになり、どうやら海賊盤マーケットというものが存在するらしい事を薄々知るようになりますが、次々と発売される新譜のチェックやロック史に燦然と輝く名盤たちの復習に手一杯で、そのような世界に足を踏み入れている余裕はまったく無かったのです。

(当時はロック雑誌にブート店の広告が普通に掲載されていました)

 

そんな状況が少し変わったのは、自分にとってガンズが特別なバンドになってからしばらく経ったある日の事。

毎日のようにガンズの作品に触れ、雑誌の記事なども貪るように読んでいるうちに、Shodow Of Your LoveとWhole Lotta Rosieという2曲のアルバム未収録曲がどうしても聴きたくなってきました。

しかし、その2曲が収録されている日本企画盤『ライヴ・フロム・ザ・ジャングル』はとうの昔に廃盤となり、学生には手の届かないようなプレミア価格が付けられています。

今ならYoutubeなどでサクッと聴くところですが、当時はそんなものは影も形も無く、どうにかして現物を手に入れて聴くしかありませんでした。

 

なんとかしてガンズのアルバム未収録曲を聴きたい。

 

考えに考えた末、ふと思い出したのがあの西新宿の光景。

あそこなら手に入るかもしれない。

藁にもすがる思いで、あの怪しげな界隈に再び足を踏み入れたのです。

 

結論から言えば、西新宿で得たものは当初の目的を達成するどころか、それを遥かに凌駕するものでした。

スタジオデモと共に収録された前述の2曲はもちろんのこと、『Rumbo Tapes』と題されたCDには、ガンズの公式ディスコグラフィーをいくら確認したところでその存在すら確認出来ない未発表曲がてんこ盛り。まさに驚愕。

これで完全にブートレグの魅力に取り憑かれました。

 

当時はスラッシュがスタジオを追い出されバンドを脱退。

「誰それがメンバーらしい」「アクセルはテクノにハマっているらしい」「プロデューサーが交代したらしい」という噂話が断片的に入ってくるばかりで、新作のリリースどころかバンドの将来する不透明な状況でした。

そもそもガンズというのは公式音源の数が少なく、容易にディスコグラフィーをコンプリート出来てしまうようなバンド。

そして、関連記事などに目を通すと決まり文句のように書かれているのが「ライヴが凄い。なにが起こるかわからない」という事。

つまり、ガンズというのは非常にブートレグに手を出しやすい土壌を持ったバンドな訳であります。

 

それから少しずつブートレグを買い集めるようになりました。

当時は中古CD屋でガンズのブートレグを見かける事も多く(それだけ多くの枚数が流通していたという事でしょう)、比較的安い値段である程度の数を収集する事が出来たと思います。

また、グランジブームによりHR/HM人気が後退した事により、西新宿のブートレグ屋でも関連商品のワゴンセールを頻繁に行っており、お財布に優しいお値段で貴重な盤を手に入れたケースもありました。

 

が、やはりそこは非合法商品。当たり外れがあります。

中には隠し録り丸出しの酷い音質で「金返せ!」と叫びたくなる事もしばしばありました。(まあ、その手の音源に慣れてきて、ブートレグ耳を手に入れると聴こえ方も違うのですが、それはまた別の話)

特に当たり外れが顕著なのがブートビデオでした。

当時は現在のようにDVDではなかったので、元テープからダビングしたものが商品として販売されていました。

ビデオはダビングを重ねる度に劣化していきます。

なので、購入するお店でクオリティが違うのはもちろんの事、同じお店で購入したとしても個体差が発生してしまうのです。

某A店のように試写システムがあるところなら実際に確認してから購入できるのですが、そうでないお店で買う時はまさに博打です。

何度血の涙を流した事か…。

それに引き換え今はDVDなのでダビングによる画質の劣化はありません。デジタルコピー最高!と絶叫したい心持ちであります。

 

そんな手探りでブートレグを収集する日々に転機が訪れたのは大学に入学し、初めてのパソコンを手に入れた頃でした。

そう、インターネット環境の導入であります。

そこから一気に世界が開けました。

国内外に無数に存在するガンズのファンサイトを訪問し、自分が所有しているブートレグの詳細を知ると同時に、今まで見たことも聞いたこともなかった音源の存在も知る事になったのです。

特に好んで訪問したのが、セットリストやライヴ中の出来事などを詳細に記した海外サイトと、ブートレグのレビューを行っていた日本のとあるガンズサイトでした。

 

特に日本のサイトの管理人さんとは掲示板と通じて交流を持つようになり、お互いのコレクションをCD-Rに焼いて交換するようになりました。

いわゆる「トレード」というヤツです。

他にも何名かを交えて音源をトレードするようになり、収集のスピードが飛躍的にアップしました。

そうなってくるとブートレグ収集にほとんどお金がかからなくなり、たまに新規の音源を購入する時も、これはトレードに使えるかどうか、つまり他の人が所有していない音源かどうかが判断基準となりました。完全にマニアですね。

 

最初は活発だったトレードもひと段落し、音源収集のスピードが鈍り始めた頃、事態は新たな局面を迎えます。

今まではブートレグ業者が制作し、商品として市場に流通している音源を収集の対象としていたのですが、ネットで色々と調べていくうちに、未だブートCD化されていない貴重音源が海外マニアの間で取引されている事がわかりました。

マニア…いや、ガンズファンとしてそれらに手を出さない訳にはいきません。

そう。海外トレード時代の幕開けです。

 

つたない英語を駆使し、海外トレーダーにメールを送ります。

求める音源の条件としては主に以下の点を重視しました。

 

・ブート化されていない事

・音質が良好な事

・珍しい曲が演奏されている事(Coma、Locomotive、Breakdownなど)

・セットリストが特殊な事

 

海外トレーダーの間で日本製のブートCDの人気が非常に高く、日本製1枚に対して2~3枚の音源と交換してくれました。

綺麗なジャケットや盤面プリントが珍しかったようです。

これらの取引で、ブートCDとして出回っていなかったComa初演のリッチフィールド、Breakdownを演奏したMSG公演などが日本のトレーダーの間で出回る事になりました。

そして最大の目玉となったのが、ガンズ史上最高に奇妙なセットリストとされている88年のNY Lime Light公演です。

これはOne In A MillionやCornshuckerという超レア曲をプレイしているだけではなく、前半がアコースティックセット、後半がエレクトリックセットというガンズにしては非常に珍しい二部構成を持ったライヴなのです。

さらにアクセルの機嫌がすこぶる悪く(ライヴ当日、アクセルは完全オフ日だと思っていたそうです)、途中で消えたり現れたりし、メンバーは苦し紛れのジャムで繋いだり、ローディーにツェッペリンを歌わせたりして、なんとかライヴとしての体裁を保つという非常に興味深い演奏が聴けます。

前半の一部はLangleyレーベルから出ていた『SELF DESTRUCTION BLUES』というブートで聴けたのですが、完全版としてはこの海外トレード音源が初。

このライヴを通して聴いた時は本当に戦慄しました。

よく暴動にならなかったな、と…。

このライヴの2日後、あの伝説のリッツ公演という名演がある訳ですから、本当にムラがあるバンドですよね、ガンズって。

まあ、だからブートを集めてしまう訳ですが…。

 

そんな我々トレーダーのマニア魂はその筋のお方の目にも留まる事となります。

ついに業界人の登場であります。

その方は後にガンズ関連の超優良音源を多数リリースする某Aレーベルのオーナー様なのですが、非常に面白い話を色々と聞かせて頂く事が出来ました。

あまり詳しい話は自粛させて頂きますが、業界が景気の良かった頃は、ブート屋に某トレンディ俳優がふらっとやって来た事もあるそうですよ。

ちなみにお蔵入りとなったSlash's Snakepitの『Ain't Life Grand』のInterscope版を手に入れる事が出来たのは完全にこの出会いのおかげです。本当にありがとうございました。

 

そんなドキドキ海外トレード時代も長くは続きません。

某日本人トレーダーが、当時出回っていたガンズの全ライヴ音源を海外トレーダーから一挙に手に入れたのです。

これで完全に均衡が崩れました。

すでに全音源を所有している人にはどう考えても勝ち目はないでしょう。

お互いに持っていない音源をちまちまトレードする時代は終わったのです。

 

このトレーダーさんは某Aレーベルと手を組み、ガンズファンが驚愕するような超優良音源を次々にリリースしました。

僕も音源をいくつか無償に近い形で譲って頂き、コレクションが非常に充実したのを覚えています。

あんな音源やこんな音源を耳にする事が出来たのも、すべてその某トレーダーさんのおかげであります。

きっとみなさんのコレクションの中にも少なからずそのトレーダーさんの息がかかった音源があるのではないでしょうか。

ある時期を境にそのトレーダーさんとは音信不通になってしまいましたが、もしも何かの機会に再会する事が出来たら、その当時の思い出話を色々としたいと思っております。

 

その後、僕は就職して仕事に忙殺され、ブート事情に疎くなってしまいました。

また、某ガンズサイトの管理人さんは海外留学し、現地で観に行ったガンズライヴで暴動に巻き込まれてファンを卒業されたようです。

僕はここ何年かでまた新作ブートをチェックするようになりましたが、今はもうトレーダーさんとの付き合いも無いので、ごく普通に買わせてもらう立場となっております。 

最近は録音機材や撮影機材の進歩なのか、すごい良質な音源が多いですよね。

最近は「えっ。こんなレア音源が?」と驚くようなものは少ないですが、86年のAin't Goin' Down初披露のライヴ(これは間違いなくAin't Goin' Down以外音源も存在しているそうです)などが発掘されるのを気長にまってます。

 

まあ、マニアの戯言を色々と書き連ねてきましたが、今はちょこちょこブート音源のレビューなどをやっていきたいと思います。

「マニアが何か言ってるな」程度のスタンスで見て頂ければ幸いであります。

また、「これをレビューして欲しい」というリクエストがございましたら、コメント欄もしくはTwitterで呼びかけて頂ければ可能な限り応じさせて頂きたいと思います。