どうも。ホップ、ステップ、僕です。
趣味は布団の上に横たわって朝まで眼を閉じることです。よろしくお願いします。
今回はわたくしの入院・手術の顛末を垂れ流す記事の第3回目でございます。
初回は受傷から入院初日まで、第2回は手術当日の模様をお送りしましたので、今回は手術翌日からの話を語らせていただこうかと思うわけです。
まだお読みでない方や読んだけど内容がまったく頭に入っていない方、ただ純粋にリンクを踏むことが好きな方のために前回・前々回の記事をご紹介しておきます。よろしく哀愁です。
今回は3回目ということで、4コマ漫画であれば起承転結の「転」にあたるわけでして、これまでの話に新たな意味合いを加える展開を期待されるわけです。
でもね、受傷、入院、手術という一番盛り上がるパートはすでに過ぎてしまっているわけで、あとはもう盛り下がる一方なんですよ、ホントに。
ここから先につきましては、地味なブログを淡々と読みたい人、わたくしと同じ怪我をしてしまった人、シリーズ物は最後まで読まないと気が済まない人向けのマニアックな世界だとご理解ください。よろしく哀愁です。
- 2024年5月15日(水)
手術後はHCU(準集中治療室)での経過観察となったわたくし。
入院初日から2日連続で窒息死の恐怖におびえながら過ごした一夜でした。(詳細は前回記事参照のこと)
口呼吸メインで1秒1秒をやり過ごし、どうにか溺れることなく朝を迎えることができたようです。明け方にほんの少しだけ微睡んだような、微睡んでいないような。そんなレベルの睡眠時間。
全身麻酔で使用した薬剤の影響なのだろうか。眼を閉じると変な幻覚のようなイメージが見えて面白かったナー。
めちゃくちゃクリアに見えるわけではないのだけれど、おびただしい数の人間が密集してうごめいている地獄絵図みたいな光景がまぶたの裏側でずっと展開されていたのです。
あ、その地獄絵図が続いている間は、どういうわけか何かのイメージを脳裏に描くことができなかったんですよ。人の顔とか風景とか。あれも薬剤の影響だったのだろうか。
全身麻酔を受けたことがある方は「自分はこんな幻覚が見えた係」までハガキやFAXをお寄せくださいませ。
まあ、どうにか朝を迎えたところで、こちらは術後でHCUに入っている身です。
朝食が提供されるわけでもなければ、ベッドから離れて顔を洗いに行けるわけでもありません。
数種類の点滴を血管に送り込まれ、看護師さんに痛みの度合いなどを確認され、心拍数やら動脈血酸素飽和度やら血圧やらをモニタリングされるだけの無力な生物として横たわっているだけです。
そんな悲しきクリーチャーのもとに見知らぬ医師が来訪。
初対面のその医師、包帯でグルグル巻きにされパンパンに腫れたわたくしの顔を見るなり「整形直後の芸能人みたいですね。がはははは」と言い放つではありませんか。
うん、わたくしもそのギャグは嫌いじゃないし、それを言うタイミングは絶対に今しかないんだけど、それらを差し引いたとしても今じゃねえなと思った。
もちろんそんなことを言うために来訪したわけではなく、術後の血液検査の結果を伝えに来てくれただけでした。
手術の影響による数値の変化(おそらく炎症反応とヘモグロビンあたりか)が少しあるだけで、あとは問題ないとのこと。
他の患者さんにも余計なひとことを付け加えるのかなと思って聞き耳を立てていたけど、あんなこと言われてるのわたくしだけだった。くやしい。
その後、HCUから一般病棟に移る準備がスタート。
看護師さんに身体を拭いてもらった後、ずっと地味に気になっていた尿道カテーテルの抜去へ。
抜くときの痛みはそれほどではなかったけれど、違和感が尋常じゃなくて震えた。生まれてこのかた、液体以外のものが通ったことないじゃない、尿道って。
尿道の入口付近に一方通行の道路標識のタトゥーを入れたくなったけれど、そんなことをした日には尿道カテーテルを抜くときどころの痛みじゃねえなと思った。
そんな尿道の危機を乗り越え、手術前までいた一般病棟のベッドへと生還を果たしたわたくし。
まあ、顔は包帯でグルグル巻き、左腕には点滴のルートが2本、左鼻には流動食を入れるためのチューブが1本、右鼻には鼻出血の止血目的で入れたガーゼが5枚という状態ではあるけれど、HCUから出られるということは術後の状態が安定しているという証拠ですよ。
まずはそれを素直に喜び、回復への道を順調に歩んでいることに感謝したい。
その日の午後、入院初日にネットで注文しておいたレンタルWi-Fiが届いたため、家から持参したパソコンで仕事再開です。
身体に管が入りまくっている状態ではありますが、受傷日から手術日まで3日間も穴を空けてしまった分を取り戻すべく、張り切って仕事を進めていくわたくし。
ソファーに寝そべりながらコーラス録りをしていた奥田民生さんが「いいんだよ。聴いてる人にはわからないから」と言い放つ映像を観たことがあるけれど、包帯でグルグル巻きにされたおっさんがやった仕事だってこともわからないだろう。恰好なんてどうだっていいんですよ。
あ。包帯グルグル巻きで困ったことがひとつ、いやふたつあったんだった。
普段はコンタクトレンズをしているわたくしですが、入院中はメガネで仕事をしようと考えていたのだけれど、包帯でグルグル巻きにされているせいで耳が外に出ていないんですよ。
いざメガネをかけようとしてツルの部分がスカッと空振りしたときは戦慄しましたね。「えっ。耳なくなった!?」と思った。耳なし芳一は絶対にコンタクトレンズ派だと確信した瞬間です。
まあ、包帯が取れるまではコンタクトレンズでいいやと気持ちを切り替えて、せめて音楽でも聴きながら作業しようかなと思った瞬間に再び戦慄が走りました。
イヤホンを入れる耳の穴がないんだわ。
これは完全に予想外の展開。音楽も聴かず淡々と仕事をするコンタクトレンズのおっさんとして数日を過ごすしかなさそうです。
この日の昼から流動食が始まりました。
鼻から胃まで通したチューブに流動食のパックを接続し、点滴の薬剤と同じように滴下していきます。
月曜日の朝に某ウィダー in ゼリーを吸って以来の食事ということになるのだけれど、口を通ってないから味はしないし、数日ぶりに胃に何かが入ってくるという感動もない。
あえて感想を述べるとしたら、流動食の第一陣が鼻の辺りを通過するときに少し冷たくて変な感じがするぜ、ということくらいか。
流動食は下痢をしやすいという話はさんざん見聞きしていたのだけれど、その例に違わずわたくしもお腹を下しました。
整腸剤を処方してもらったり流動食の種類を変えてもらったりして少しはマシになったけれど、お腹が下り気味という状況は流動食が続いている間は改善しなかったな。
逆に整腸剤のせいなのか、腸の動きが本当にすごくて「すみません。F1腸内グランプリ開催中ですか?」というレベルでぐるぐるしてた。
まあ、胃に液体を注ぎ込んでいるだけだから、あれが固形になって尻から出てくることをイメージするのはちょっとばかり無理があるんじゃないかなと思う。
Twitterなどで見かけるギャグで
屁「屁です」
肛門「よし、通れ!」
うんこ「屁です」
肛門「よし、通れ!」
ってやつがあるじゃないですか。
マジでわたくしの肛門も完全に検問能力がゼロになってしまって、ガスなのか液体なのかまったく判断ができなくてめちゃくちゃ怖かった。
昼夜を問わずトイレに行きまくるハメになって同室の方々には申し訳なかったけれど、こっちも実際に肛門を通してみるまでは何が出てくるかわからない状態だったので勘弁していただきたい。
トイレに行くたびに心のなかの小堺一機が「なにが出るかな? なにが出るかな?」と言いながらステップを踏んでいたので。
その日の夜、主治医が来室し、手術についての詳細を教えてくれた。
手術自体は上手くいったが、折れ方がちょっと厄介だったとのこと。
枯れて水分が抜けた木の枝ってバキッと真っ二つになるじゃないですか。でも、湿った木の枝とか瑞々しい木の枝ってメキッって感じで折れ曲がるだけで、完全に切り離すのが難しかったりしませんか。
若木骨折といって骨がまだやわらかい子供の骨折でよくあるパターンなのだけれど、わたくしの骨折も顎の骨の表側と裏側に骨折線が認められるものの、一部が繋がっていて不完全な折れ方をしていたそうです。
まあ、わたくしは小児ではなくて普通のおっさんですが。
そのままだとプレートで固定するのが難しいとのことで、とりあえず完全にバキッと折ってから骨を寄せて固定したとのことでした。
先生は「こんなん聞いたらショック受けるかもしれないけど…」と説明するのを少し躊躇していたけれど、わたくしは「あ。そんなチョコモナカジャンボを食べるときみたいな感じで骨をへし折ることあるんだ」と逆にテンション上がってました。
わたくしは中途半端に折れた顎の骨を完全にへし折られた男ですよ。そんな肩書、もらおうと思ってももらえないやん、普通。
もうひとつ言われたのが、下の歯並びを直すとき、よくわからない箇所があったということ。
「下の前歯なんだけど、これでホンマにいいんかな?って感じだったんだよね。まあ、とりあえずそのまま直したんだけど」と今でも解せない様子の主治医。
わたくしにはその原因に大いに心当たりがあったので、「あ。実は僕の前歯はいわゆる“ガチャ歯”っぽい感じで、歯が少し重なっている部分があったんですよねー」と説明したところ、「ガチャ歯かー! それはわからないわー。なるほどねえー!」と難しいなぞなぞの答えを教えてもらった人みたいなリアクションが返ってきました。
その直後、「いやー。それは気付かなかったわ。ごめんなさい」と急に落ち込み出したので、「いやいや。それは先生のせいじゃないですよ。だってガチャ歯のときを見てないですもん。「この人、なんかガチャ歯っぽいな」って言って直さないじゃないですか、普通」とか言って猛烈な勢いで慰めてた。たぶんあんな勢いで医者を慰めることは人生で二度はないと思う。
治療がすべて終わったとき、どんな歯並びになっているのか楽しみやね。
- 2024年5月16日(木)
本日から顎間固定がスタート。
噛み合わせがおかしいまま骨折が治ると大変なことになってしまうので、上下の歯に装着したフックに直径5ミリくらいの輪ゴムを引っ掛けて正しい位置へ誘導する治療です。
最初は結構な数の輪ゴムでガチガチに固定されたので、かなり頑張って力を入れても1ミリくらいしか口を開けることができないレベル。ちょっとしたレクター博士気分を味わえるのでオススメです。
受傷から4日、手術から2日ですが、この時点で痛みはほぼゼロ。
上下の顎を固定されることが結構ストレスになるかなと思いましたが、唇を動かすことは出来るし、水も自由に飲むことが出来るので不快感はそれほどでもありません。
手術による併発症だと言えるのは、右顎の部分のしびれくらいのもの。これは顎の神経が通っている部分に金属プレートを設置することで生じたもので、起こる可能性があることは手術前に説明を受けていました。
感覚が過敏になっている部分と鈍くなっている部分があって、触ったりするとそれなりに違和感はあるのだけれど、別に麻痺があって動かないわけではないし、ゆくゆくは症状が消失するはずだと言われているので、長い目で経過を見ていこうと考えております。
まあ、こんな予想される併発症であっても「手術が原因でこうなったんだ! 責任取れ!」などと医療過誤のような扱いをする患者もいるんだろうナーと思うと、医者って本当にしんどい職業だナーとお気の毒になってしまう。
手術という最大のイベントが終わり、あとは地道だけど大切な治療を粛々と続けていくだけのフェーズへと突入しました。
まだ術後2日目ということもあって看護師さんもそれなりに気にかけてくれるけれど、総合的に判断すれば自分が優先度・重症度の低い患者であることはわかっているので、出来るだけ医療従事者の手を煩わせないように入院生活を送っていたのは病院スタッフ経験者の性(さが)というやつでしょうか。
担当医や担当看護師には自分のことを詳しく知っていて欲しい、覚えていて欲しいと考えるのは患者としては当然なのだけれど、医療従事者も患者と同じ人間。忘れてしまうこともあるし、人によって理解度が異なるのは当たり前のことです。
また、自分のことについて綿密な申し送りが逐一おこなわれているなどとはゆめゆめ考えない方がいいです。「忘れてるのかな?」「昨日の看護師さんから伝わっていないのかな?」と思ったら、「昨日、今日○○するって言われたような気がするんですけど~」くらいのテンションで質問してあげてください。
前回の記事が5,000文字程度だったので、今回もそのくらいのボリュームでひと区切りとさせていただきたいと思います。
記事の冒頭でも触れましたが、受傷、入院、手術という一番盛り上がるパートはすでに過ぎてしまったため、これからは地味な入院生活の話となりますよ、マジで。
まあ、病院そばの高層ビルから窓ガラス越しに狙撃されたなどという作り話を盛り込んでもいいのだけれど、そんな中途半端な「シティーハンター」みたいな話を誰が読むんだとも思うし、正直をモットーに生きて来た自分の生きざまにも反してしまうので、次回も事実に基づいたリアルな入院生活を綴っていきます。
よろしく哀愁です。