A Kind of Magic

どうも。僕です。

今回は申し遅れませんでした。

むしろ唐突すぎる自己紹介かもしれません。

 

それにしてもアレですね、コロナですね。

流行っていいコロナと流行ってはいけないコロナがあるとしたら、今回のコロナは明らかに後者。

楽しみにしていたライヴやイベントが続々と延期もしくは中止になって悲しい限り。

生活物資の買い占めまで起こったりして、時はまさに世紀末ですよ。

YouはShockなどと叫びながら屋外に飛び出していきたい心持ちであります。

 

もう世の中のムードは自粛自粛で、大勢の人が集まるイベントなどを開催しようものなら非国民扱い必至ですよ。

社会科の教科書で見た、集会所に憲兵が乗り込んで来て「解散!解散!」などと烈火のごとく怒られるやつですよ。

下手に抵抗しようものなら蟹工船を書いた人みたくなってしまうわけです。

そんな社会情勢なものですから、職場の歓送迎会なども自粛の方向でしょう。

春は出会いと別れの季節ですが、「あ。よろしく」とか「あ。今までありがとうございました。これからも頑張ってください。どもですー」くらいの挨拶で済ませるしかないわけですよ。

味気ないですね。

 

普段はあまり意識していなくても、いざ自粛と言われると気になってしまうのが人間の性というもの。

わたくしも職場の飲み会に思いを馳せるマイライフになってしまいました。

そんな時、ふと思い出したのが、とある年におこなわれた職場の忘年会。

今日はその時のお話をさせていただくことにいたしましょう。

 

 

あれはわたくしが社会人2年目の時だったでしょうか。

事務系部門の忘年会の幹事に任命されまして、色々と準備をしておりました。

出欠のお伺いに奔走したり、ビンゴ大会の景品を準備したり。

そんな日々の中、後輩のT君という子がわたくしの席にこそこそとやって来てひそひそと言うわけです。

 

 りょうさん、僕、忘年会で手品をやりたいんですけど…

 

T君が手品を嗜むとは知らなかったので一瞬面食らいましたが、おそらく1年目の職員は何か余興をやれと言われるはずなので、こちらも軽い気持ちでオーケーを出しました。

どうやらT君、その年の納涼会で同期のM君がモノマネを披露してお偉いさんに気に入られたことに嫉妬していたようで、忘年会で挽回してやろうという魂胆らしい。

とりあえずTo Do Listに「T君、手品」とだけ記録し、忘年会当日まで通常業務と準備に追われる日々を過ごしました。

 

忘年会当日。

会場となるホテルの宴会場に姿を現したT君に「予定通りでいいんだよね?」と問いかけると、恥ずかしそうな笑顔で「まかせてください」との返答。

今になって思えば、この時点でネタの内容を確認しておくべきでした。

 

忘年会は飲めや歌えやの大騒ぎで、前述のM君も納涼会で披露したのと同じネタを繰り出し、大いに場を盛り上げております。

そんな中、ついにT君の手品タイムがやってまいりました。

身長155センチくらいの小男で、仕事ぶりは褒められ1割叱られ9割、でも何故か憎めないキャラ。

職場の寮にデリヘルを呼びまくり、最終的には寮の全部屋のポストにデリヘルのチラシが入るという事態を引き起こした伝説の男。

それがT君です。

 

説明が遅れましたが、わたくしが勤務していた職場というのはかなり規模の大きな事業所でして、事務系だけでもホテルの大きな宴会場を使用するんです。

世が世なら渡辺徹と榊原郁恵がゴンドラに乗って颯爽と登場するんじゃないかっていうくらいの宴会場ですよ。

ですから、社会人1年目にしてそんな大会場で手品を披露するというT君の強心臓ぶりを心の中で褒めたたえていたわけです、わたくしは。

同期のM君と張り合いたい、という下心が見え見えだったとしても、それはそれで微笑ましいことじゃないですか、などとポジティヴに受け止めていたわけです。

 

反社の人との関係も噂される事務長を筆頭に多くの職員が見守る中、少しひきつったような笑顔で登場したT君。

その手には東急ハンズの手品コーナーで1100円くらいで売ってそうな明らかに初心者向けの手品セットが。

正直、この時点でかなり嫌な予感がしました。

 

白いテーブルクロスが掛けられた長机に何やら小さな物品を置き始めるT君。

近くまで行って確認すると、どうやらコインマジックをやるつもりらしい。

この巨大な会場で、前方2列くらいの人しか見えないレベルのコインマジック。

そのチョイスのおかしさに眩暈がしましたが、ここまで来たらもう止められません。

 

今となってはどんなマジックだったか微塵も覚えていませんが、仕掛けが成功した後、前方にいた数人が小さく拍手をした事だけはぼんやりと記憶に残っています。

わざわざ貴重な時間を割いた挙句にこの体たらく。

幹事としてどのようにオチを付けるべきか頭をフル回転させていると…

T君が懐から何かを取り出たかと思うと、パン!という破裂音が。

 

ふがいなさのあまり自決したかな?と思いましたが、どうやらウケなかった時のためにクラッカーを仕込んできた様子。

しかも、クラッカーも大してウケず、ついにT君は会場から逃亡。

それを見た同期のM君が発した「逃げた!捕まえろ!」というセリフは会場にいた全員の総意だったでしょう。

この惨劇以降、T君は全裸という一番簡単でウケの良い芸を披露する汚れ芸人に堕し、彼が全裸で歌うTOKIOの“AMBITIOUS JAPAN!”見たさに多くの人が飲み会に参加するという現象を引き起こしました。

 

みなさまにおかれましても、コロナ騒ぎが終息して日常生活が戻って来た場合でも、宴会の余興のチョイスには最新の注意を払っていただきたい。

よろしくお願いいたします。