This is my truth

どうも。寝ても覚めても僕です。

ていうか、寝たり覚めたりした時に別人になってたら困りますね。

ええ。話題に事欠いております。

環境大臣のように中身の無い話をしてしまいますね。

 

 

アルバム完全再現ライヴ。

誰が始めたのか知らないけれど、いつの頃からか猫も杓子もやるようになりましたね。

もうすっかり文化として定着したような印象。

ベテランバンドがツアーをする口実にもなりますしね。

中には「わざわざ完全再現するほど良いアルバムですか、それ?」と口を出したくなるようなケースもあるけれど…

 

ちなみに僕がそのような趣向のライヴを初めて観たのは、Metallicaが『Master Of Puppets』を完全再現した2006年のSummer Sonicでした。

スラッシュメタル史に燦然と輝く非の打ち所が皆無の名盤ということで、最後の一音まで存分に堪能したのを今でも鮮明に記憶しております。

史上最高のインスト曲のひとつ“Orion”に涙したのは僕だけではないでしょう。

その後、同じ趣向のライヴを観る機会に何度か恵まれましたが、まあなんと言うか…

良いものもあれば、それほど良くないものもある、といった感じ。

バンド史上最高のセールスを記録した“バンドの顔”的な作品であっても、ライヴで通して聴いてみると「あ。ここ中だるみするな…」と冷静になってしまうことも。

しかも、ライヴでの演奏時間は限られているので、アルバムを丸々再現することによって、その他の定番曲が入る余地が少なくなってしまうのも事実。

セットリストに柔軟性を与えるのが難しくなることは大きなデメリットのひとつです。

来日の報に喜びつつも「完全再現いらんから普通にライヴやってくれー」と思ってしまうファンも多いのでは。

  

ピクセルアート(いわゆるドット絵)アーティストのtakekiyo先生(本名:武田清)に「りょうさんのブログ、前置きが長いんだよね」と苦言を呈されたので、ぶん殴るぞこのカーディガン野郎 この辺で本題に入りましょう。

ウェールズ出身にしてイギリスの国民的ロックバンドManic Street Preachers(以下、マニックス)の来日公演を観てきました。

今回は1995年リリースの5thアルバム『This Is My Truth Tell Me Yours』(邦題:俺も言ったんだからお前も言えよー)の20周年を記念したツアーとのこと。

この時期に来日の運びとなったのは、熱烈なラグビーファンであるメンバー達が日本で開催中のラグビーワールドカップを観戦したいから、という噂ですが、どんな理由にせよ来てくれるのはありがたいことです。

f:id:R__Y__O:20190927144844p:plain

(写真:なんかだだっ広いところで撮られた『This Is My Truth Tell Me Yours』のジャケット写真)
 

 

マニックスのアルバム完全再現ライヴを観るのは、3rdアルバム『Holy Bible』、4thアルバム『Everything Must Go』に続いて3回目。

過去2回の完全再現ライヴでは、大いに満足して帰路についた記憶があります。

しかし、今回は不安が先立ってしまったことを正直に告白しておきましょう。

だってさ、今回再現される『This Is My Truth Tell Me Yours』って少々かったるいアルバムなんだもの…。(ファンの人達、わたしをぶん殴りに来ないでください。)

ギタリストのリッチー・エドワーズの失踪という悲劇を乗り越え、スリーピース編成となったマニックスが復活作『Everything Must Go』を全英2位に送り込んだのが1996年。

それに続くアルバムとして1998年にリリースされた『This Is My Truth Tell Me Yours』はバンドに初の全英1位という名誉をもたらすことになりました。

国民的バンドという地位を確立したのもこのアルバムのおかげだと言っても過言ではないかもしれません。

でもね、このアルバムは僕にとってはソフト過ぎるんですよ…。

大衆に歓迎されるにはこのくらいソフトである必要があるのかもしれないけど…。

 

というわけで、喜びと不安を半々…いや、不安の方を少し多めに抱いて足を運んだ日本ツアー初日。(と言っても東京2dayしか組まれていない。)

会場はガンダムのオブジェでおなじみのZepp DiverCity Tokyo。

結論から言ってしまうと、僕の不安は完全に杞憂に終わりました。

マニックス大勝利。

心配性のりょうさん惨敗。

 

スペシャルゲストを務めたASIAN KUNG-FU GENERATIONがステージを後にしてから約30分後、ほぼ20時ちょうどに場内が暗転。

オープニングSEが会場に鳴り響くと、それを合図としたかのように後方から人波が押し寄せ…ない!

押し寄せてこないよ、お母さん!

マニックスのライヴは後方からの圧縮が強いイメージだったのだけれど、会場を支配するこのまったり感の正体はいったい…。

ええ。どう考えても『This Is My Truth Tell Me Yours』というアルバムの作風のおかげですね。

ありがとうございます。

 

アルバムの曲順通り“The Everlasting”からライヴはスタート。

のっけから大名曲炸裂で早くも客席からは大合唱が巻き起こる。

これがアルバムの1曲目って曲順おかしくないか?と思いつつも、その良すぎるメロディに惹かれて僕も合唱しておりました。

2曲目は本来であれば“If You Tolerate This Your Children Will Be Next”なのだけれど、曲順を入れ替えて完全再現パートの最後に回されていました。

アルバム通りだと最後が地味になってしまうのが否めないため、大ヒットシングル曲で大団円を…ということなのでしょう。

その工夫は大成功で、「Will be next!! Will be next!!」という大合唱の中、最高の雰囲気で完全再現パートを締めくくる結果に。

このブログで演奏曲目について詳細に記すことは避けますが(きっと熱心なファンの方による熱いブログを見つけることができるでしょう)、ライヴ全体の印象などについて触れていきます。

 

まずアルバム完全再現パートについて言えば、“ソフトな作品”という印象が覆ることはありませんが、その音楽のクオリティの高さには舌を巻かされっぱなし。

今までは“少しかったるい”イメージすら抱いていたのも事実。

しかし、かったるいのではなく、聴くのに集中力を要する音楽だったのだということに気付かされた約1時間でした。

バンド全員が真摯に音楽と向き合って紡ぎ出される音と感情。

時には限りなく抑圧され、時には怖いくらいに解き放たれて。

ショーが進むにつれ、その音の機微に耳を傾けることに快感を覚えている自分がいました。

名曲“My Little Empire”の素晴らしさは言うに及ばず、ギターとキーボードで演奏された“Born A Girl”の静謐さは絶品。

 

前述した通り、アルバム完全再現パートは“If You Tolerate This Your Children Will Be Nextで終了。

ここから先は同アルバム収録曲以外の楽曲を思う存分楽しむ時間です。

バンドはそのままステージに居残り、特にこれといった区切り感の無いまま第2部がスタート。

いきなりの“Slash N Burn”で1stアルバム原理主義者達のテンションは急上昇。

あのまったりしたアルバムからの落差が凄すぎるんじゃ!

その以後もあんな曲やこんな曲の数々に頭を振ったり歌ったり涙ぐんだり。

とにかく感情が揺さぶられまくりました。

Stone Temple Pilotsを観た時にも感じましたが、多感な頃に聴いていたバンドのライヴを観ると、マインドが完全に当時に戻ってしまいますね。

エモい。

 

個人的には嬉しかったのが、とあるカバー曲が聴けたこと。

ギター/ヴォーカルのジェームス・ディーン・ブラッドフィールドが「この曲は…特に何か背景があったりするわけじゃなくて…ただ楽しいから演奏する曲なんだよね…」などと散々言い訳した後、おもむろに弾き始めたのは…

 

 

 Sweet Child O’ Mine!!!!!

 

 

初期マニックスが敬愛していたGuns N’ Rosesの大ヒット曲に場内はさらにヒートアップ。

僕と友人たちがガンズTシャツを着ていたせいでしょうか。

わざわざ僕らの前まで来てギターソロを弾いてくれて大感激。

この日の開演前、マニックスのガチファンの友人が「マニックスのスイチャでは手拍子が必要なんですよ」などと言うので、ガンズガチファンの僕としては「ふざけるな。手拍子をするスイチャなんてスイチャじゃない!」と激しく反論する、という不穏なやり取りがありました。

そんな中、後半の「Where do we go?」パートでキーボーディストが観客に手拍子を要求するという問題行動が発生。

それに対して僕と友人(ガンズガチファン)が取った行動は…

 

 

 ええ。満面の笑みで手拍子をしておりました。

 

 

なんなの、あの求心力の強すぎる手拍子要求。

あんなん絶対手拍子してしまうやん。

マニックスのスイチャこわい。

 

 

あ。スイチャに対する思い入れが強すぎますか。

話をマニックスに戻しましょう。

「デビューアルバムを世界中でナンバーワンにして解散する」という誇大妄想のような発言やリッチー・エドワーズが剃刀で自らの腕を切り刻んだ「4 Real事件」などで音楽誌の見出しを飾り、スキャンダラスで危険なイメージが定着していた初期マニックス

もちろん誰もが知っている通り、彼らのデビュー作はナンバーワンヒットにはならず、アルバム1枚で解散するどころかスタジオアルバムの枚数は12枚を数えるベテランバンドとなっている。

当時の彼らの目には、Zepp DiverCityのステージに立ち、決してハードとは言えない楽曲を心地よさそうに演奏している50歳過ぎのミュージシャンの姿はどのように映るだろうか。

“なりたくない未来”だと顔をしかめるだろうか。

 

でも、別にそれでいいんじゃないかな、と思う。

最初に思い描いた理想とは異なる地点にたどり着いたとしても、それはきっと熟考と選択を重ねてきた結果だ。

当初の理想が崩壊しても前に進んだこと、リッチーというバンドのイメージを決定付けていたメンバーの不在を乗り越えたこと。

「あきらめる」という選択肢が現実的だった局面だってあったはずだ。

しかし、その選択肢から目を背け、まったく先の見えない闇へ飛び込んでいった彼らの勇気。

ステージ上で武骨に(本人たちとしてはスタイリッシュにふるまっているつもりなのかもしれないが…)良い曲を鳴らし続ける彼らの姿から、雨風に耐え続けた巨木のような力強さと誇りが感じられた。

   

 

俺たちはあきらめずにここまで来たぞ。これが俺の真実だ。お前のはどうだい?

(This is my truth tell me yours)

 

  

彼らの音に身体を揺らしながら、ふと今回のライヴのテーマを思い出してハッとした。

自分の中途半端さを指摘されたような気がして、思わず伸ばしてしまったのは己の背筋。

自分の真実を他人に語れるほど必死に生きているとは言いがたい。

最初に描いた理想に拘泥しているのかもしれない。

ただスイチャを聴きに来ただけなのに、最後はマニックスの三人から思い切り背中を叩かれて激を入れられたようだ。

いつの日か、迷える友人がいたらこう言える自分になりたい。

 

 

 This is my truth tell me yours.

 

 

なかなか筆不精の僕ですが、ここ最近は頻回な更新を心がけております。

書き終わったところでお酒でも飲みたいところですが…

いや、よそう。また夢になっちゃいけねえ。