毛の短い雑種の猫を両肩に乗せた状態で47都道府県を制覇するのが夢です。
達成率で言えば今のところゼロではありますが、まあその気になれば3ヶ月もあれば本州はすべて回れるのではないかと考えております。
勝手にね。
あ。申し遅れました。僕です。
もっと正確に言うならば、2025年5月5日に魂を置いて来てしまった僕です。
まあ、その日に何があったのかは言わずもがなではありますが、「言ってくれないとわからない」「察してちゃんはズルい」「もう何もわからない」というご意見がごく一部の方々から出ないとも限りませんので、ここはあえて言葉にして説明させていただこうと思います。
勝手にね。
2025年5月5日、横浜はKアリーナにて開催されたGuns N' Rosesの一夜限りの来日公演。
公演から半月以上が経った今もその余韻が色濃く残っておりまして、完全に“ガンズロス”といった精神状態が続いている関係上、「魂を置いて来てしまった」などという少々大袈裟な表現を用いてしまった次第です。申し訳ございませんでした。
記事タイトルをご覧になった方はおわかりかと思いますが、今回の記事は「後編」ということになっておりまして、後編というからには「前編」および「中編」が存在するわけです。
「存在するわけです」などと物知り顔で説明した今になって、「もしかしたら世の中にはいきなり後編というパターンもあるのでは?」という不安が頭をもたげ始めましたが、仮にそのような特殊なケースが存在する場合でもご報告は不要とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
あ。念のために前編および中編のリンクを貼っておきますので、まだお読みになっていない方、読んだけど内容がしょぼすぎて忘れてしまった方、音読している途中で激しく咳き込んでしまった方、米を買ったことがない方、毛の短い雑種の猫といった方々はもしよろしければ前編から順繰りにお読みになってください。
読みたくないという方はとりあえずクリックだけしてすぐに画面を閉じてください。アクセス数だけありがたく頂戴いたします。
えー。前編・後編を使ってですね、物販およびGOLDラウンジの様子、そしてアリーナ席への入場までを軽い筆致でサクサクと迅速に遅滞なくご説明してきたわけですが、ここからはいよいよライヴ本編に触れていこうと思うわけです、わたくしが。勝手にね。
わたくしは単刀直入をモットーとしておりますので、1曲目から最後の曲までをバーッと一気に、そして簡潔に振り返っていければな、とまあそのように考えております。
読み終わった後に「いやー。シンプル過ぎるよー」「たまには脱線も必要だよー」というご意見・ご感想・ご不満・言いがかりを頂戴する可能性も大いにありますが、そのシンプルさ、極端なまでの潔さ、ミニマリストぶりがわたくしのブログの魅力のひとつだとご理解いただければ幸いであります。
さ、ここから先は2025年5月5日のKアリーナです。あの日、あの場所に置き去りにしてしまった魂を取りに行こうではありませんか。
8列目が1列目という、これまでの人生で当たり前だと思っていた数字の序列の在り方に一石を投じそうな席レイアウト(中編参照)に大いに戸惑ったわたくしではありますが、この広大な会場内において自分の席以外に身の置きどころもなく、ひとりぽつねんと椅子に座って場内に流れるUrge Overkillの大名曲“Sister Havana”に身体を揺らすなどして開演を待っておりました。
Urge Overkillの“Sister Havana”くらいの名曲が場内に流れたとあれば、まだ席に着かずにロビーでビアを飲んだり話に花を咲かせていたりする人たちが「えっ。もう開演したの?」と慌ててすっ飛んで来るくらいの盛り上がりを見せても不思議ではないと考えるじゃないですか、普通はね。
いやー。わたくしだけだったよね、喜んでるの。Urge Overkillに対してなんであんな無反応でいられるんだ、日本の人。あまりにも悔しすぎて泣きに泣いた。Urge Overkillマブでかっこいいから聴いてください。YouTubeからMVを貼りつけようとして、この大名曲がまだ200万回再生にも届いていないことを知ってさらに泣いてしまった。
Urge Overkillの大名曲へのあまりの仕打ちに怒りに身体を震わせていると、どこからかわたくしの名を呼ぶ声が。声のする方を見やると、なんと3席ほど離れた同じ列、つまり8列目という名の最前列にTwitter(現:Twitter)のホロワーさんがお座りになっているではありませんか。本来ならばこちらから挨拶に行くべきところ、わざわざわたくしの席まで足を運んでくださり、最前列という予想だにしなかった幸運が舞い込んで来たことを喜び合いました。
実はこのホロワーさん、わたくしと同じ愛の街川崎にお住まいになっている方でして、自分とりょうさん(わたくしのこと)が最前列のチケットを確保できたのは川崎市のIPアドレスが非常に強力だったことが最大の要因であって、今後の公演のチケットについても良席間違いなしである、という大変ありがたい極秘情報を教えてくださるではありませんか。2022年の来日公演では埼玉県IPアドレス最強説が囁かれましたが、2025年現在、その覇権は東京都を飛び越えて川崎の地へと移ったようです。
政令指定都市・愛の街川崎に居を構えた幸運を喜び合い、その方はご自身の席へと戻って行かれたのだけれど、5秒後くらいに再び戻って来られまして、「よくよく考えたらこのチケットを取ってくれたのは東京都大田区在住の人だった。嘘をついてしまって大変申し訳ない」とおっしゃるので、川崎市IPアドレス最強説は短い命だったナーと落胆すると同時に、その方の自分の間違いを素直に認めて謝れる姿勢、とても正直で誠実な人柄、そういったものに大きな感銘を受けた結果、わたくしは失望した様子などひとつも見せずに「あっ。大丈夫です」と対応することができました。
余談ついでにもうひとつだけ。今回のガンズライヴのためにアイホン16に機種変更をしたわたくし。その際、学生時代から長年にわたって使い続けてきた某大手キャリアを卒業し、他キャリアの低価格帯プランへと乗り換えたのです。そのような価格帯のプランを使用するのは生まれて初めてのため、機種変更手続きを担当してくれたスタッフの方に「コンサート会場みたいな人が多い場所に行くと繋がりにくくなったりしませんか?」と確認したところ、一瞬の躊躇もなく「繋がりますヨー」と返ってきたのですが、たった今、開演前の時間つぶしにTwitterでも開こうかと取り出したスマホはアンテナ0本。大手キャリアの普通のプランがいかに優れていたのかを身をもって知ることになったのです。
これは終演後に知ったことですが、実はこの時、わたくしが最前列にいることに気付いた某ホロワーさんから「許さない」という脅迫めいた、いや、完全に脅迫の意思を全面に押し出した悪質なDMが届いておりました。まあ、このDMを受信できなかったことにより、我が身の安全が脅かされていることに気付かぬまま無心にライヴを楽しむことができたので、通信が脆弱な低価格プランに変更したことは結果オーライだったと言えるかもしれません。知らぬが仏とはまさにこのこと。
ただの時計と化した最新型スマホに目をやると、すでに開始予定時刻の18時を過ぎております。初日の韓国公演は開演まで40分近く押した挙句、かなり短いセットリストとなってしまったという話だったので、日本もその二の舞になるのではないかと嫌な汗をかきそうになったところで場内暗転。約20分ほど遅れてのスタートとなりました。
開演前からステージ上のスクリーンには、アルバム『Appetite For Destruction』のアートワークで使用されている十字架がドーンとそびえ立ち、その周りをヌルッとした質感を持つ人型の生き物がお祭りのような雰囲気で盛り上がっているという謎の映像が延々と映し出されておったのだけれど、十字架の中心部分にガンズのロゴが映し出されると場内大歓声。いよいよ始まるわけです。なにが。ガンズのライヴが。

具体的なコンセプトは不明ですが、どうやら十字架自体が何かしらのマシンになっているようで、起動音を轟かせながら様々な映像をスクリーンに投射し続けるなか、いつの間にかアクセルを除くメンバーが各自ステージ上の定位置にスタンバイ完了。「Please welcome~」のアナウンスが鳴り響くと後半はもう聴き取れないほどの大歓声が沸き起こり、これから幕が切って落とされるロックンロールショーへの期待に膨らんだ胸が破裂しました。誰の。わたくしの。
まあ、ひとつだけ言わせていただけると、オープニング映像は2022年の方がよかったような気がいたします。前回はアジア/オセアニアツアー用に作られたものだったので、地域性のある映像だったら嬉しかったかな、と。
オープニング映像がクライマックスに差し掛かった時、場内の空気を切り裂くように鳴り響いたのは、衝撃のデビューアルバムの衝撃の1曲目を飾る“Welcome To The Jungle”の衝撃のギターリフ。ディレイのかかったスラッシュのギターリフが行き場所を求めて空間を駆け巡った後、まるでパズルのピースがすべてはまったかのようにバンドが一斉に走り出す瞬間が大好きだ。ロックの歴史を見渡しても、最高のデビューアルバムの最強のオープニング曲のひとつだと思いますよ、あたしゃ。
出だしから快調な歌唱を聴かせるアクセル・ローズは、黒ティーシャーツ、黒パンツ、サングラスというシンプルないでたち。世界的ロックスターらしからぬ地味衣装と言い換えることができなくもないコーディネートではあるが、耳に突き刺さる歌声、そしてマイクスタンドを携えて軽快なステップを踏むその姿は、間違いなくアクセル・ローズその人である。注目の新加入、アイザック・カーペンターに目を移すと、なんと登場時から早くも上半身裸。こちらはもう“衣装”ですらないが、なんとなく彼のキャラクターに合っているような気もする。いずれにせよ、これまでのガンズにはいなかったタイプだと言えるのではないでしょうか。はい。
アクセルの「Oh, Tokyo!! I wanna hear you scream!!」の絶叫に「あ。やっぱり横浜は東京扱いなのね」と思ったのもつかの間、その後のパートでは「Do you know where you are? You're in the jungle, Yokohama!!」と軌道修正に成功しており、その驚異の対応力に心のなかで開催を叫んだのがわたくしです。終演後、間違えた時の動画を見返したところ、オフマイクでスタッフとなにやら通信しているアクセルの姿が映っており、その口が「Yokohama」と動いているのが確認できました。「埼玉や千葉は東京でもいい。でも、横浜だけはアカンのや」というアクセルの心意気が余すところなく発揮された感動エピソードとして語り継いでいきましょうね、神奈川県民のみなさん。
そしてなによりも特筆すべきことは、2016年4月のスラッシュ&ダフ・マッケイガン復帰以降、長きにわたってオープニング曲として固定されていた“It's So Easy”がついにその座を明け渡したという事実でしょう。リユニオン以降のガンズライヴはセットリストの固定性が批判の対象となることも少なくなかったのですが、今回のツアーは今までとは少し違うぞ、と予感させるに十分なオープニング曲の交代劇でございました。そして、その予感は次の曲で早くも的中することになるのです。

“Welcome To The Jungle”の衝撃も醒めやらぬなか、聴こえてきたのはスラッシュのチャカポコとしたカッティングとアイザックのドラムの絡み。これが“Mr. Brownstone”への導入であると察知したオーディエンスは大きなリアクションで応えますが、どういうわけか楽曲は軌道に乗ることなく尻つぼみに終了してしまったではありませんか。おやおや、2曲目にしていきなりハプニングですか。このツアー、やはり面白いことになりそうです。
ディジー・リードがアドリフでフレーズを弾き、バンドがそれに乗っかる形で一応の恰好をつけると、改めてスタートしたのは賑やかなパーティーチューン“Bad Obsession”。いかにもイジー・ストラドリンなルーズな曲調で、人を食ったようなアクセルのヴォーカルが素晴らしい。ずっと聴きたいと思っていた曲だったので本当に嬉しかったナー。“ライヴで聴いたことのある楽曲リスト”がまたひとつ埋まりました。贅沢を言うならば、さらに“Pretty Tied Up”も聴けたら申し分なかったのだけれど。
先ほどのハプニングについて補足しておくと、事前に印刷されたセットリストの2曲目は“Mr. Brownstone”でしたが、どうやらアクセルがライヴ中に思い付きで変更したようです。最終的なセットリストと事前印刷のそれを比較してみると、Altリスト(演奏される可能性のある楽曲群をまとめたリスト)からの追加曲があるだけではなく、曲順自体もかなり変更されておりました。曲中・曲間を問わず、アクセルがオフマイクでメンバーおよびスタッフだけに聞こえるように指示を出している場面が何度も見受けられたので、おそらくそのうちの何割かは次の演奏曲を伝えるものだったのでしょう。
これはわたくしの推測になりますが、事前に決めたセットリストが存在するにもかかわらず、行き当たりばったりにすら思える変更・追加を随所に織り交ぜたのは、新メンバーのアイザック・カーペンターを1日も早くバンドにフィットさせるための愛の鞭だったのではないかと考えるわけです。1年半ぶりのツアー、しかも新メンバーを迎えた初めてのツアーという状況を考えれば、ガチガチに固めたセットリストを確実に遂行していく方が安心安全。しかし、リユニオン以前のガンズはセットリストがかなり流動的なことで知られていたバンドです。アクセルとしてはアイザックに早いところ“ガンズ流”を経験させたかったのではないでしょうか。初期・近藤真彦さんばりのやけくそ唱法で「そいつがガンズのやりかたー」と絶唱するアクセルの姿が頭に浮かびました、わたくしのなかで。
3曲目には目下の最新アルバムにしてロック史に残る大名盤『Chinese Democracy』(2008年作)からタイトルトラックが演奏された。スラッシュとダフ・マッケイガンが不在だった時期の楽曲ではあるけれど、イントロリフを弾くスラッシュの姿は今となってはすっかり堂に入ったものである。2016年のリユニオン時に「スラッシュがチャイデモを!?」と驚愕したのは今は昔、やはり人間はどんなことにも慣れてしまう生き物なのですねえ、としみじみ。ダフとメリッサ・リースのバッキング・ヴォーカルも非常に効果的に機能していて、今のガンズの調子の良さ、コンビネーションの妙がうかがえて嬉しい。アウトロではアクセルが顔をブルブルと震わせる謎のアクション。おちゃめアクセルは今回も健在のようでございます。

ミステリアスに蠢くベースラインが始まりを告げるのは、ガンズ脱退後にスラッシュとダフが結成したVelvet Revolverの代表曲“Slither”。ガンズが同曲を初披露したのは2018年6月のことだったけれど、その衝撃といったらスラッシュが弾くチャイデモ収録曲以上のものがあったのは間違いないでしょう。アクセルが歌うヴェルリヴォを聴ける日が来るとは思わなかった。そして、とにかく鮮烈だったのが初披露時に炸裂したアクセルの自由闊達な歌唱ぶりです。「え。もしかして歌いながら歌メロを作ってます?」と恐る恐る質問したくなってしまうレベルのフリーフォームぶりで、もはや前衛的な印象すら受けたのはわたくしだけではないはず。たぶんあの日のアクセルは「スリザーって200種類あんねん」と公言していたと思う、舞台裏で。あの日から約7年、今やアクセルは“俺なりのスリザー”を会得し、実に安定したメロディを堂々と歌っておりましたよ、ええ。
「カバー曲の次にもう一回カバー曲をやる。お笑いの基本は反復やから」とアクセルが言ったかどうかは知らないけれど、“Slither”に続いたのはポール・マッカートニーのカバー曲“Live And Let Die”でございました。そう、91年当時からライヴの大定番曲なのでついつい忘れがちだけれど、これもカバー曲なんですよね。この曲はアクセルのロングトーンシャウトが一番の聴きどころ。ギターメロディを奏でるスラッシュの甘いトーンも絶品でございました。
うやむやな感じで終わってしまった“Mr. Brownstone”が6曲目にしてついに登場。リユニオン以降におこなわれた来日公演ではオープニングの“It's So Easy”に続く2曲目に固定されていたので、この位置で聴けるのは実に新鮮です。ドラムが重要な役割を果たすグルーヴィーな楽曲ということもあり、いやが上にもアイザックのドラミングに耳が向いてしまうのだけれど、まったく違和感を抱かなかったどころか、その実に見事な叩きっぷりに感銘を受けたほど。
アイザックのプレイに関して言えば、マット・ソーラムのようなパワフルなタイプではないけれど、前任ドラマーのフランク・フェラーよりも歯切れがよく、ガンズの歴代ドラマーで例えるなら“ブレイン”ことブライアン・マンティアのようなキレで勝負するタイプだという印象を受けました。ガンズのトリビュートバンドでプレイしていた経歴の持ち主ということもあり、ガンズが求めるドラミングをしっかりと理解して体現できるドラマーなのではないでしょうか。そして、もっとも好印象だったのは、ガンズにいられることが嬉しくて仕方がないんだろうナーと思わせてくれるニコニコぶり。あの人懐っこい笑顔は「お母さん、ガンズにスティーヴン・アドラー枠が戻って来ましたよ」とわたくしに手紙を書かせるに十分な破壊力がありました、書かないけど。
おそらくバンド内でもすでに愛されキャラになっているのでしょう。展開が複雑な曲や長いソロパートに突入した際などは、ダフがアイザックに寄って行って様子をうかがうシーンが頻繁に見受けられました。ダフがコーラスなどの都合で動けない時には、代わりにリチャード・フォータスが「どうだー。やってるかー?」という感じで面倒を見てあげていたので、アイザックも「中途入社で不安でしたが、やさしい先輩たちのいる楽しい職場です」と大いに安心しているのではないでしょうか。知らんけどね。まあ、腕前と人柄についてはリクルートしたダフのお墨付きでしょうし、あとはガンズという大企業に慣れるだけですね。頑張っていただきたい。
あ。えらく脱線してしまいました。ライヴの話に戻しましょう。アイザックがあまりにも好印象だったのでついつい熱くなってしまった次第です。大変申し訳ございません。
7曲目に披露されたのは、アクセルのペンによる大作“Estranged”。正直なところ、こんなに序盤に置かれるべき曲ではないと思うし、みんなもそう思っていると思うのだけれど、いざ曲が始まればその完璧すぎる展開の美しさにやられてしまい、「ああ。この曲を生み出してくださってありがとうございます」と感謝の気持ちで胸が埋め尽くされるのです。サビの「ワン、ツー!」はもちろん大合唱。わたくしの人生でこんなに「ワン、ツー!」と叫ぶのは“Estranged”を除けばLINKの“さよならアンダーワールド!”を聴く時くらいのものである。この曲のピアノソロはディジー・リードの数少ない見せ場のひとつ。近年のライヴにおいては驚くほどたどたどしく聴こえた日もあったのだけれど、今回はかなり見事なソロだったと思う。今ツアーではインスタ投稿も頑張っているディジーをよろしくお願いいたします。
“Estranged”の濃密な余韻をガンズの楽曲でもっともアイコニックなドラムイントロを持つ“You Could Be Mine”が引き裂くと、オーディエンスのマインドは再びハードロックモードへ。マイクスタンドもろとも高速回転するアクセルのアクションはオフィシャル映像作品となった1992年の東京ドームのビデオで観られたそれと完全に一致するが、あの時よりも回転速度がいくらか遅くなっているように見えるのは、地球の自転速度が年々遅くなっていることに起因するのであろう。科学のことはよくわからないけれど、たぶんそういうことなんだろうと思っております。
聞いたところによると、この曲の途中からドラムの聴こえ方がおかしくなったエリアがあったそうです。アリーナの音響はまったく問題を感じなかったので、「ホンマですかー?」とTwitter(現:Twitter)にアップされていた動画をいくつか確認したのですが、たしかにドラムが時間差でダブって鳴っているように聴こえ、パートによっては原曲とはまったく異なる珍妙なビートになってしまっていました。それを評して「盆踊り」と書いている方もいて、言い得て妙だと変な感心の仕方をしてみたり。わたくしはゆらゆら帝国の名曲“夜行性の生き物3匹”を思い出しました。
主に会場のLEVEL7周辺で起こったという当該音響トラブルと関係があるのかわかりませんが、同曲の中盤以降、明らかにアクセルとバンドの演奏がズレて進行する場面があり、「いやいや、これはツアー序盤だからってレベルじゃねーぞ」と戦慄したのはわたくしだけではないでしょう。めちゃくちゃズレているにもかかわらず、まったく心を揺らすことなく演奏するメンバーたちはさすがだと感服した次第です。後日、とある場所で入手したIEM音源(わからないお友達はご両親に訊いてみよう)を確認したところ、アクセルが「I can't hear me」とスタッフに伝えている場面があったので、何かしらの技術的トラブルが原因だったのかもしれません。
続く“Double Talkin' Jive”はとにかくインストパートがかっこいい曲。シングル曲でもなければ一般知名度の高い曲でもないのだけれど、1990年代当時およびリユニオン後のライヴにおける定番曲のひとつとなっております。つまり、スラッシュ在籍時ってことやね。わたくし、この曲は後半に長尺インストパートが入ることから、アクセルが休憩時間を捻出できる曲として重宝しているのではないかという仮説を持っておったのですが、つい先日、それを立証するような出来事がありました。
それは5月23日、今ツアー7番目の公演地にあたるサウジアラビア公演でのこと。理由は不明ですが、この公演ではアンコールがなく、通常であれば本編最後の曲となる“Nightrain”からそのまま最終曲“Paradise City”に雪崩れ込むという珍しい構成でした。注目したいのは“Nightrain”の直前に“My Michelle”と“You're Crazy”という激しめの楽曲が続く箇所です。アクセルにとってかなりの肉体的負担となることは間違いありません。そこでアクセルはどうしたか? そうです、“My Michelle”の前に“Double Talkin' Jive”を置いて休憩時間を捻出したのです。通常、“Double Talkin' Jive”はライヴの前半に配置されることが多く、サウジアラビア公演のように後半に披露されることはありません。アンコール前休憩無し&ハード系2連発という高すぎるハードを前に、アクセルが自分の身を守るために休憩曲である“Double Talkin' Jive”を後半に移動させたという解釈でよろしいのではないでしょうか。ダメですか。
ちなみにサウジアラビア公演で“Double Talkin' Jive”の前にやった楽曲を確認してみると、なんとバラード系4連発でした。アクセル、めちゃくちゃ自分の身体をケアしてるやないですか。えらい。ちゃんと自分を大切に出来るアクセル尊い。みんなも自分を大切にしてあげてくださいね。常に自分をVIP、つまりVery Important Personだと思うマインド、すっごく大切だと思います。

“Double Talkin' Jive”のインストパートでたっぷりと英気を養ったアクセル、ここはハード系の楽曲を一発ぶち込んで会場をヒートアップさせるのがセオリーでしょう。と考えるじゃないですか、普通はね。しかし、我々のような凡人が定石だと安易に考えるような手を打つ男ではないのです、アクセル・ローズという天才は。彼が本日の10曲目に選択したのは、ボブ・ディランのカバー曲“Knockin' On Heaven's Door”でした。しっかり休憩した直後のまさかのバラード。さらに言えば、10曲目にして早くも3曲目のカバー曲でございます。打率で言ったら3割バッターやね、カバー曲界の。
この曲も“Estranged”と同様に「ちょっと置く位置が早すぎませんか?」なのだけれど、そんな不満も瞬時に吹き飛ぶレベルでアクセルの歌が素晴らしかった。2022年も惚れ惚れするほど素晴らしかったのに、今回も最後の“Woo”の美しさにぶっ倒れそうになったよね。あの“Woo”の美しさだけでチケット代8万円のうち3万円くらいの値打ちがあったと思うし、コロナ禍ど真ん中にぶち当たった2022年には実質NG行為だったコール&レスポンスを今回はバッチリ決めることが出来たので、このノッキンだけでチケット代の大部分を回収したと考えてもよろしいのではないでしょうか。ここから先は実質無料、ボーナスステージ突入です。
えー。本来ならばですね、今回でライヴ部分をすべて書き切ってしまおう、これで後腐れなく終わりにしてしまおう、Bye-Bye ありがとう さよなら、などと完結編を強く意識したブログ運び(“試合運び”のような意味で)を心掛けていたつもりなのですが、ライヴ開始から10曲目までを振り返ったところで1万文字を大きく超えてしまいました。これも大体はわたくしの不徳の致すところでありまして、ここまで読んでくださったみなさまの過失は多く見積もっても1割、もしくは2割程度なのではないかと考えております。
こうなってしまったらもう仕方ありませんので、今回は「【後編】(1)」のタイトルとさせていただき、続きは次回へと持ち越しということでご理解いただけますと幸いです。このようなタイトルにした場合、()内の数字は無限に増やすことができるわけで、次回で完結させることを強く意識しながらも、もしも文字数が増えすぎてしまった時にはさらに次回に持ち越せるというわたくしにとって非常に都合のよいシステムになっておりまして、大きな声では言えませんが「非常に都合がよいナー」と思っている次第であります。
引き続きよろしくお願いいたします。