叩く人、叩かれる人

世の中には色々なコラボレーションがあるじゃないですか。

ギャンブル場と消費者金融のコラボレーションがあったら需要と供給が完全に一致すると思うのだけれど、この名案をどこに持って行けばビジネスチャンスに繋がりますか。誰か教えてください。

 

あ。ご挨拶が遅れました。

常に新しいビジネスモデルを模索している僕です。

常に出資者も募集しております。

よろしくお願いいたします。

 

今日はすぐに本題に入りましょうかね。

すぐに本題に入らないのが自分の悪いところだと自覚しているし、すぐに本題に入らないことによってブログを読みに来てくださるみなさまの時間を無駄にしてしまっていることも認識しております。

みなさまの時間を無駄にすることは社会の損失、つまり世界の損失です。

この悪癖を断ち切るにはどうすればいいのか。負の連鎖から抜け出し、より良い人生を歩むにはどうすればいいのか。

それは誰にもわからない。

 

あ。すみません。本題のことを失念しておりました。

さっさと本題に入らない自分をビンタしたいですね。軽めに。

入るよ! すっごい入るよ!(桜庭選手の「すべるよ! すっごいすべるよ!」の口調で)

 

 

えー。みなさまにおかれましては、11月11日に発売されたGuns N' Roses『Use Your Illusion』のボックスセットはお買い求めになられたでしょうか。

ええ、そうです。定価5万円くらいするやつです。

「Super Deluxe Edition」っていうCD7枚&Blu-ray1枚セットのやつです。

 

 

こちらのボックスセットの目玉と言えるのが、1991年5月16日に開催されたリッツ公演の模様を収録したBlu-ray『LIVE IN NEW YORK, Ritz Theatre - May 16, 1991』。

いやー。これがもう筆舌に尽くしがたい美麗映像で、これを世に出してくださってありがとうございますと果てしなく感謝をする一方、こんなすごい映像を30年以上も秘匿しやがってと文句のひとつも垂れてしまいたくなるほどの逸品なわけですよ。

まあ、簡単に言えば“全ガンズファン必見のBlu-ray”ということです。

 

つい先日、ガンズファンにとっての聖杯とも言える同作を大きな画面でじっくりと観る機会がありました。

このリッツ公演は1991年5月24日からスタートする『Use Your Illusion』ツアーのウォームアップ・ギグとして組まれたもので、ディジー・リードとマット・ソーラムにとってはガンズ加入後6本目のライヴということになります。

今回は新ドラマー、マット・ソーラムについて少し書いていこうかなと思っております。

Twitterでやるには少し長く、ブログでやるには少し短いテーマなのだけれど、ツイートの連投でタイムラインのお目汚しになるのも嫌なので、こちらでやらせていただくことにしました。

 

さて、みなさまはマット・ソーラムことイルカおじさんにどのような印象をお持ちでしょうか。

ガンズ在籍時の印象が強い方には

 

『Use Your Illusion』ツアー期のマット・ソーラム

 

こんなバンダナのイメージが。

ガンズ脱退後にスラッシュやダフ・マッケイガンと結成したVelvet Revolverの印象が強い方には

 

一気に垢抜けた感のあるVelvet Revolver

こんな感じのシュッとした風貌のドラマーとして記憶されているのではないでしょうか。

ガンズ加入以前、The Cult在籍時の彼を記憶している人がどれだけいらっしゃるかわかりませんが、わざわざ画像を貼る意味もなさそうなので割愛いたします。

 

肝心のドラマーとしては、パワフルで正確、よく訓練されたミュージシャンという印象があります。

今回、1991年のライヴ映像を観た感想もその印象と相違なく、バンド加入からそれほど期間が経っていないということもあるせいか、非常に丁寧にプレイしているように思えました。一緒にプレイするミュージシャンの立場から言えば、かなりやりやすいタイプのドラマーだと言えるかもしれません。

特にアルバム『Use Your Illuson』からは多様な音楽性を取り入れた楽曲が増えたため、ドラマーとして高いスキルを持ったマットの加入はバンドにとって渡りに船だったでしょう。

 

しかし、ファンの間でマット・ソーラムの評価があまり高くないことも事実。

逆に、前任のスティーヴン・アドラーはロックドラマーとして卓越した技術は持っていないものの、彼にしか醸し出せない独特のフィーリングがあり、1stアルバム『Appetite For Destruction』に残したプレイは「あれこそがガンズのグルーヴの神髄なんだ」と神格化されています。

純粋にミュージシャンとしての技量を比較した場合、圧倒的な大差でマット・ソーラムに軍配が上がるはずですが、上手ければいいという話ではないのが音楽の面白いところ。

いまだに少なからぬ数のガンズファンがスティーヴン・アドラーの“音符に書き表せないリズム感”にロマンを抱いているのです。

本日はその理由についてわたくしなりの考えを述べさせていただこうと思っております。

 

 

話をわかりやすくするため、Guns N' Rosesというバンドを1台のレーシングカーに例えてみましょう。

このレーシングカーには5台のエンジンが積まれており、それぞれが異なる役割を果たしています。(厳密に言えば『Use Your Illuson』期はディジー・リードというエンジンも積んでいるはずですが、話がややこしくなるので無視します)

 

メインエンジンのアクセル・ローズは出力が不安定なところが玉に瑕ですが、ハマった時に見せる馬力は業界随一。ガンズを特別な存在に押し上げた要素のひとつです。

そして、同じくガンズに特別なフィーリングを加えていたのが、スティーヴン・アドラーというエンジン。

これはちょっと変わったエンジンで、出力が非常に不安定な代わりに、調子が良い日には他のエンジンまでパワーアップさせてしまう不思議な特性を持っていました。

アクセル・ローズとスティーヴン・アドラーの調子が良い日は、ガンズというレーシングカーは本来の限界を超え、満点を超える130点の走りを見せることが出来たのです。

 

しかし、スティーヴン・アドラーというエンジンは「さあ、これから!」という時に故障してしまい、ガンズはこれに取って代わる新しいエンジンを探さなければなりませんでした。

そこで白羽の矢が立ったのが、スティーヴンとは違って常に安定した出力を出すことが出来るマット・ソーラムです。

飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍を見せていたガンズは、これからさらにグレードの高いレースを走ることになる身。

いざ走ってみなければ調子の良し悪しがわからないエンジンよりも、常に安定したパワーを出せるエンジンの方が好都合に決まっています。

 

つまり、ガンズは130点を叩き出す魔法のような夜を手放す代わりに、80~90点をコンスタントに出せる(アクセルの調子次第ではあるけれど)安定を選んだということになります。

おそらく多くのファンが安定感のあるマットよりも不安定なスティーヴンに魅力を感じるのは、ハマった時の爆発力、5人が己の限界を超える瞬間のロマンにあるのではないでしょうか。

少なくともわたくしがマットよりもスティーヴンを贔屓にしているのは、それが大きな理由となっております。

 

しかし、当日のスティーヴンの健康状態や技量では『Use Your Illuson』のレコ―ディンやツアーをこなすことが出来なかった可能性が高いであろうことは間違いありません。

メンバーも「新曲の中にはスティーヴンの手に負えないものもあった」という意味の証言をしていました。

そういう意味では、マット・ソーラムの加入はガンズにとってベストな選択だったのではないでしょうか。

特に“You Could Be Mine”のようなパワフルなドラミングが求められる曲は彼の本領が見事に発揮されており、現在に至るまでの歴代ドラマーの追随を許さないハマり具合。

1993年7月まで続いた『Use Your Illuson』ツアーを無事に終わらせることが出来たのは、マットの安定感があったからこそだと言えるでしょう。

 

そんなマット・ソーラムは、2020年に自身初の自伝本『Double Talkin' Jive: True Rock 'n' Roll Stories from the Drummer of Guns N' Roses, The Cult, and Velvet Revolver』を上梓。

あまり話題にならず、日本語訳もいまだに出版されておりません。

 

あまり話題にならなかった自伝本


わたくしは入手して面白そうな部分だけざっと読みましたが、「この人、こんな本を出しちゃって大丈夫かな?」と心配になるくらい各方面への不平不満が満載の内容でした。

これで本がベストセラーになれば「バンドの内幕を切り売りした甲斐があったね!」と言えるけれど、これじゃお世話になった人たちに後ろ脚で砂をぶっかけただけですよ。

率先して自分の立場を悪くしていく男、それがマット・ソーラム

まだAmazonなどで入手できるはずですので、興味がある方は自己責任で読んでみてください。それなりに興味深いパートもあります。

 

 

あ。ここからは余談です。

11月11日、つまり『Use Your Illusion』ボックスセットの発売日にですね、宅急便の配達員の方が自宅を訪ねて来たわけですよ。

そんなの理由はひとつしかないわけですよ。

『Use Your Illusion』ボックスセットの現物がついに我が家にやって来たわけですよ。

 

感動に打ち震えて荷物を受け取ったわけですが、なんか思ったよりも箱が小さい。

あ。こんなサイズ感なんだ。保管スペースが小さくて済むからありがたいね!

などと思考をポジティヴな方向へ誘導しながら箱を開封したわけですよ。

 

 

そしたら入ってたよね。

 

なにが。

 

マット・ソーラムの自伝が。

 

 

いやー。思わず窓から投げ捨てそうになったよね。

はるばる海を越えて『Use Your Illusion』ボックスセットと同じ日にやって来るんじゃないよ、我が家に。

あまりのまぎらわしさにJAROに電話して「まぎらわしいのはダメだよ!」って苦情を入れようかと思ったよね。

タイミングを読まないのはダメ、絶対。

 

 

あ。最後にひとつ宣伝させてください。

現在発売中の『ヘドバン Vol.37』でガンズ関連の記事を2本担当しております。

すでにお読みいただいた方、本当にありがとうございます。

アヴリル・ラヴィーン表紙号でございます。

是非お手に取っていただけたら非常に嬉しいマイライフです。